第60話 まともに飛ばないパチンコ
「シュ、シュウ……お前……」
シンヤが哀しそうな目で僕を見つめる。やめるんだ! そんな目で僕を見るんじゃない! ……僕がパチンコで放ったゴム弾は的に当たるどころか、全くデタラメな場所に飛んでしまっていた……。
「も、もう一回だ! 今度こそ当てるんだぞ? いや、当てなくても良い! 可能性だけでもオレに示してくれ!」
シンヤが懇願するように僕に指示する。僕は改めて狙いを定める。
「はあっ!」
僕は気合の声を乗せて指からゴムを放す……。放たれたゴム弾は的へと一直線に……飛ぶことはなく、シンヤの家の塀を超え、場外へと消えていったのだった……。
「シュウうううううううううううううう!?」
シンヤは悲しみと驚きのあまり、僕の名を叫ぶ……。知ってたさ……。僕自身が極度の運動音痴であることは……。まさか、パチンコもまともに飛ばすこともできないとはね……。「フッ」と僕は目を瞑り、ため息を吐く……。
「なに、カッコつけてんだ!? どうやったらこんなに下手クソに生まれることができるんだ!?」
「い、いやカッコつけてるわけじゃ……」
「ぬあああああ! さすがに予想外だろ。こんなの!」
シンヤが頭をかきむしっている。僕は申し訳ない思いを抱えながら提案する。
「なあ、シンヤもうちょっと近づいても良いかな? これじゃ当たんないから……」
「情けないこと言ってんじゃねえよ! てかダメだ!」
「な、なんで?」
「正直なところ、十メートルでもちょっと危ないんだぜ? 弾が跳ね返ることを考えたらよ……」
「そ、そうか……」
「……練習だな……」
「え? な、なに?」
「練習だよ! 今から玩具のパチンコ買いに行って練習だ!」
「ええ……」
結局、その日、僕は玩具のパチンコで的に弾を撃つ練習をすることになった。もちろん、SSSは脱いで、自前の肉体のみで……。
「肩に力入れ過ぎだ!」
「うん!」
「顎もっと引け!」
「う、うん」
「はあ、はあ、はあ」
「パ、パチンコ撃ってるだけで息切れするなよ……」
「う、うん……」
シンヤコーチのもと、練習は夜9時を回るまで続けられたのだが……。
「よし、今日はこれで最後だ! 今までの練習の成果を発揮するんだ、シュウ!」
「おう!」
僕は珍しく、力のこもった声を出す。フォームを確認しながら、ゆっくりとゴムを引き、的に狙いを定め、弾を放つ!
「なんでだぁああああああ!?」
シンヤが両腕を地面に叩きつけながらうずくまる……。僕の放った弾は1m程先の地面に叩きつけられていた。
僕は目を瞑り、「フッ」とため息を吐くのであった。
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