第57話 威力は2倍まで
「とにかく! 今のままの威力で作るなら僕は協力できないから! てかもう完成してるみたいだし、何を協力したらいいかもわからないけど!」
「わ、わかったよ! しゃあねえなあ。威力を下げることには同意するからさ! 協力頼むぜ……」
シンヤは、案外素直に威力を抑えることに同意してくれた。もっと威力を下げることに同意せずに、食い下がってくると思ったから少し意外だった。
「シュウにへそ曲げられたら困るからな! なんせSSSを使いこなせるのはオレとシュウだけだからな……」
……そういうことか……。でも理由はなんでもいい。さすがにあんな危険なものを友人に持たせるわけにはいかない。シンヤが人を傷つけるとはもちろん考えていないが、もしも、ってことは十分にある。
「で、僕は何に協力したら良いの? もうパチンコ自体は完成してるみたいだけど……」
「ああ、そうだな。本題に入らねえといけねえな! パチンコのコントロール上昇と威力上昇を手伝ってもらおうと思ってたんだが……。取りあえず、威力上昇はなしだな!」
これよりもさらに威力上昇を考えていたのか……。この少年は何と戦うつもりなんだろうか。地球を征服にきた宇宙人とでも戦うつもりなんだろうか……。
「取りあえず、じゃなくて永久に威力上昇はなしだ! コントロール上昇は協力する!」
シンヤは「ちぇっ」と声を出したが、僕は応じない。
「実はよう、今パチンコで狙ったのは真ん中のスチール缶だったんだよ。でも見てのとおり、大きく外れて右端のスチール缶に当たっちまった……。たった十メートルの距離でこの精度だからな……。これ以上離れたらまず当たらねえ……。やっぱ百メートルくらいの距離でも当たらないとな!」
……マジでシンヤは何と戦うつもりなんだろうか……。
「そこで、SSSの新機能として、このパチンコを使用するときに自動で照準を合わせる機能を追加したい」
「……具体的にはどんなものを作る気なんだよ?」
「今、考えてんのは、レーザー光を用いた照準装置を作りたいと思ってんだ! 漫画や映画で出て来るやつな! あるだろ? 敵の頭部に赤いポイントが映しだされて狙い撃ちするやつ!」
……確かに見たことあるが……、それはどちらかと言えば、悪役が正義側を攻撃する時に使っている気がする……。あんまり良いイメージはないな……、と思ったが取りあえずシンヤの説明にうなずいておく。
「そんでもってSSSをその装置と連動させて適切なパワーと適切な角度でパチンコを発射できるようにするつもりだ!」
武器を作ることにはあまり賛成できないが……、やっぱり作ろうとしているものは面白そうだ。
「作りたいものはわかったよ。でも、威力は2倍まで。弾も金属じゃなくて別のものに変える。それでいいよね?」
シンヤは少し不満そうだったが、僕の提案に乗った。
「でも、射程距離は百メートルな! これは譲れねえ」
「良いよ。距離はいくら伸ばしてくれても。威力さえ守ってもらえればね」
「よっしゃ。そんじゃ、オレはパチンコにレーザーポインタをつける改良とデータ収集用のシステム作るからよ。それが完成したら、テストに付き合ってくれ! 今日はこれで解散な!」
どうやら、今日はパチンコのお披露目だけのようだ。僕はシンヤに了解の旨を告げてラボを後にした。
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