第56話 パチンコの威力
シンヤは庭の壁の間際にスチールの空缶4~5本を横並びに設置する。そして、十メートルほど離れてパチンコを構えた。
「システム実行。3倍」
シンヤはSSSを起動させると、左手にパチンコを持ち、右手でゴムを引っ張る。弾はビー玉ぐらいの大きさの金属製の玉だ。相当に強力なゴムなのだろう……。金属でできたパチンコ本体がしなっている。シンヤ自身もプルプル震えながら発射態勢を取っていて、かなり力を入れていることが窺える……。
「行っくぞー! 発射!!」
シンヤがゴムを放すと、凄いスピードで弾が発射されたようだ。ようだ、と表現したのは僕の目に弾が映らなかったからだ。金属同士がぶつかる激しい音だけが聞こえる。一番右側に配置されていたスチール缶がぶっ飛んでいたのだ……。僕らはスチール缶の様子を確認する。
「ええ!? スチール缶に穴が空いてるじゃないか!」
スチール缶の横っ腹に無残な傷ができていた。かなりの威力だ。さすがにこれは……。
「シンヤ! これは駄目だよ! 絶対何かの法律に引っかかるよ! 何より危な過ぎる……」
「大丈夫だ!」
シンヤは自信満々に答える。一体何が大丈夫なんだろう……?
「こういったパチンコなんかの玩具はスリングショットって言われるんだけどよ。銃刀法違反にはならねえんだぜ?」
へえ、そうなのか。ってそうじゃない! 銃刀法違反になるかどうかではなく、こんなもんを持っていること自体が危ないんだよ。僕はシンヤに考え直すよう言葉をかけようとしたが、それよりも早くシンヤが口を開く。
「でもよう、軽犯罪法ってのにはひっかることがあるらしいんだよなあ……」
「じゃあ、やっぱり駄目じゃないか!」
「まあまあ、最後まで聞けよ。軽犯罪法に引っかかるスリングショットってのは人を傷つけるような能力があるかどうかってところで判断されるらしいんだ……」
「いや、十分人を傷つける能力あるだろ。このパチンコは……」
「でも、それはSSSを起動させた時だけ、だろ?」
……なるほど、たしかに引っ張る力をSSSで底上げした人間にしかこのパチンコは使いこなせないだろう……。僕は試しにシンヤ特製パチンコを引っ張ってみる。か、固い! ゴムが強力すぎてまったく伸びる気配がない……! 普通の人間がこれを使ってもさっきのような威力を出すことはできないだろう……。だから、危険なものであるという認識も持たれないだろうな……。
「どうよ! これなら警察に職務質問されたとしても、玩具です。で通るだろ? 軽犯罪法でしょっ引かれることもないはずだ!」
いや、確かにそうかもしれないが……、さすがに乗り気はしなかった。攻撃能力が高過ぎる!
「シンヤ……。さすがに威力が強すぎる……。このままじゃ僕は協力できないよ」
「ええ? そんな大した威力じゃねえだろ?」
「アレ見てよ! どう考えても威力ヤバいだろ!」
僕は壊れたスチール缶のその先を指さした……。そこにはシンヤが発射した金属製の弾がコンクリート壁にめり込んでいた。
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