第50話 ゴールデンウィークの終わり
「よっしゃ、そんじゃ作業始めるか!」
シンヤは腕まくりをしてパソコンの前に座る。僕の腰、肩、右手の事前信号データは既に取り直しが終わり、今からノイズを処理する作業をするのだ。
「シュウ、悪いが集中したいから、一時間くらい一人にさせてくれないか? コンビニにでも行って時間潰してくれ。栄養ドリンク飲んできた方が良いぜ? 疲れてるだろ?」
シンヤがそう言うので、僕はコンビニに行き、時間を潰すことにした。徹夜をしていたというのに、妙に目が冴えていたので、栄養ドリンクを飲んだ後、本棚に置いてある『本当にあった都市伝説』なる雑誌を立ち読みしていた。……最近のこの手の雑誌の中身はどんどん嘘っぽく感じるようになってしまったなぁ。雑誌のレベルが下がったのか……。僕が大人になったのか……。
そうこうしている内に、1時間が経過しようとしていた。僕がラボに戻ると、シンヤはもう作業を終えているようだった。
「おっし、修正作業終了したぜ! もう1回河川敷に行くぞ!」
シンヤの言葉を受けた僕はスーツを身に着け、再び河川敷に向かった。
「よーし、そんじゃ行くぞ!」
僕らは再び、五十メートル走のタイムを計る準備をする。
「いつでもオッケー!」
「よーい、どん!!」
僕は全力で走りだす……。明らかに先ほどのスピードとは違う! 間違いなくスピードアップしている! 僕はそのままゴールラインを駆け抜けた!
「どう! かなり手応えあったんだけど……!」
シンヤが笑みを浮かべる。
「3.4秒。一般成人の2倍の速度が出てるぜ……!」
「やったぁ!」
僕は喜びの声を上げる。
「おい、おい。喜ぶのはまだ早いぜ? 他のテストも引き続きやるぞ!」
結局、テストは全て成人男性の2倍以上の数値を叩きだした。完成したのだ。僕専用の身体能力強化スーツが。
「ったく! すげえよ、お前は。たった二日でやっちまいやがって……」
シンヤが頭を掻きながら時計を見る。
「午後9時17分完成だな!」
「これが僕専用のSSSか、なんだか嬉しいな」
「ああ、シュウイチロウ・スペシャル・スーツ……、SSSの誕生だな!」
僕とシンヤは笑いあった。SSSをラボに置き、僕らは解散した。午後10時。寮に到着した僕はベッドに横になる。あんなに目が冴えていたのに急に眠くなった。僕の意識は途切れそうになる……。せめて、明日、連休最後の日くらいは論文読まないとな……。
その日、僕は夢を見た。SSSを着て、テロリストをやっつける夢を。なんとも幼稚な発想の夢だった。シンヤのならず者をぶっ飛ばすという思想と何も変わらない。僕は苦笑しながら目を覚ました。テレビの電源を点ける。
『連休も終わって今日から出勤の方も多いと思いますが、1日頑張って行きましょう。行ってらっしゃい!』
美人のアナウンサーがサラリーマンの背中を押しだそうと元気に声をかけていた。ん? と僕は思い、携帯で日付を確認する。5月7日(月)と表示されていた。あれ? 僕の5月6日(日)はどこに行ったの……?
こうして僕のゴールデンウィークは最終日を丸々寝て過ごすという形で終了することになったのだった……。
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