第49話 最終テスト

 日も暮れかけた午後6時のシンヤ宅からほど近い河川敷。僕とシンヤは特殊スーツSSSの最終テストを始めようとしていた……。


「よーし。それじゃ始めっか!」


 シンヤが合図を出す。確認項目は7つ。走力、跳躍力、投げる力、持ち上げる力、握力、殴る力、蹴る力、だ。これらを2倍モードで実施し、一般男性の2倍の数値が出せれば晴れて完成というわけだ。ちなみに殴る力、蹴る力は一般男性の平均データがないので、シンヤが昔、通っていた武術道場に在籍している人たちのデータから算出したそうだ。シンヤがケンカに強かった理由はそれか……。


「準備はオッケー。いつでもいいよ」


 僕は最初の項目、走力測定のスタート位置に立っていた。


「よーい、どん!」


 シンヤの合図で僕はダッシュを始める。通常の僕の走力では考えられないスピードだ! ゴールにたどり着き、シンヤがストップウォッチを止める。


「どう!?」


 僕は期待を胸にシンヤに問う。


「だめだなあ。五十メートル、5秒4。成人男性の1.2倍から1.3倍ってとこだな……」

「そうか……。あんなに速く走れたのに……身体能力補助スーツとあまり変わらないのか……」

「あんなに速くって……。お前五十メートルのベスト、何秒だよ?」

「9秒9」

「え?」

「9秒9」

「……………そ、そうか…………」


 シンヤが哀しそうな、困惑したような微妙な表情を僕に向ける。やめろ。そんな目を僕に向けるんじゃない!


「と、とにかく、他の項目もやっていこう」


 シンヤに話を戻され、別の項目のテストを実施したが……、全て成人男性の1.2倍~1.4倍程度の数値しか出なかった。


「ああ……、全部数値低いのか」


 僕は落胆した。頑張って入力したデータに間違いがあったのだろうか?


「よっしゃ。後はオレに任せてくれ」

「え? オレに任せてくれって何するんだ?」

「今のテストで不具合のある場所は大体わかっただろ? 腰の辺りと肩の辺りの動きが悪い。あと、右手もか……。ノイズが上手く取りきれてないっぽいな」


 シンヤは原因を特定できているようだ。僕は自分でやってても動きの悪さなんて感じなかったぞ……。なんで分かるんだ、とシンヤに聞いた。


「なんでって……、こう、分かるだろ? なんとなく動きがぎこちないっていうか……」


 相変わらず、僕には理解できない天才的インスピレーションだった……


「よし、ラボに戻ったら該当箇所の取り直しと、ノイズの取り直しだ!」


 シンヤはそう言うと河川敷を後にする。僕も後を追ってラボに向かった。

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