第48話 入力完了
シンヤは自宅の方に帰って行った。それからも僕は作業を延々と続けた。夜も明けた朝6時、ようやく、僕は最後の事前信号の読み取りを終わらせた。予定よりも7時間近く多くかかってしまった。
次は読みとった僕の事前信号を小型コンピュータに入力しなければならない。これがちょっと厄介で読み取った事前信号をそのまま、ぶち込めば良いという訳ではない。ノイズを取り除かないといけないのだ。まず、読み取りを終了する際にボタンを押していたわけだが、このボタンを押すという行為をした時に出ていた信号を取り除かないといけない。
さらに、ただ腕を曲げるという行為をする際に座ったり、立ったりした状態で行っていたわけだが、この立ってるだけ、座ってるだけという場合も無意識にバランスを取るための信号を脳は出している。よって、これもノイズとして取り除き、純粋に腕を曲げる時に発生する信号を抜き出し、小型コンピュータに入力する必要があるのだ。
「おいおい、シュウ、オールしてたのかよ……」
朝7時、シンヤがラボに顔を出した。シンヤはその不良な見た目に反して、規則正しい生活を送っているようだ。
「今、絶好調なんだよ。頭が冴えてるんだ。集中できてる」
「そ、そうか。まあ、お前が大丈夫なら別に何時間でもやってくれれば良いんだけどよ……。オレは今日もサッカーに行くから。早めに家に帰れよ? 体、壊れちまうぜ」
そう言うと、シンヤはラボを後にした。僕は作業に戻る。ノイズを取り除く作業はパターンさえ決まれば、事前信号の読み取り作業に比べれば短時間で済む。
夕方になり、シンヤが帰って来た。
「おぉおおおおおおおおい!」
シンヤが大きな声を出してラボに入って来た。
「お前、まだやってんの!?」
シンヤの問いかけに僕はうなずく。
「お前、寝てねえだろ!? 死んじまうぞ。眼の下に隈出来てるぞ!」
「完成したんだ」
「今日は絶対、家に帰らせるからな! 大体、そんなに根詰めてやったって逆に完成が遅く……って。え?」
「完成したんだ」
「嘘だろ……? 約一万項目だぞ……。そんな一日、二日でできるわけが……」
シンヤは僕が入力作業をしていたパソコン画面を確認する。
「マジに……終わらせたのか? あの量を?」
「うん、今から実際に装着して最終確認をしようと思ってたんだ」
「当たり前っちゃあ、当たり前だけど……お前も普通じゃあねえのな……」
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