第43話 システム実行
僕はシンヤに言われるがまま、全身タイツを着装した。特に動きにくいとかそういう感じはなかった。肌にピタッと張り付いているという点で普段の服装と比べて違和感はあったが……。
「シンヤ、別に何も感じないんだけど……」
「あせんなよ。今から電源入れるからよ」
シンヤはタイツの背中部分に付いている直方体の機械をさわる。すると、ピッという音がした。
「んじゃ、『システム実行。1.2倍』って話してみてくれ」
僕はシンヤに言われた通りの言葉を発する。
「システム実行。1.2倍」
なんだ? 少し体がふわっとした感じがする。
「ちょっと体を動かしてみろよ」
シンヤに言われ、僕は軽く飛んでみたり、腕や膝を曲げ伸ばしたりしてみた。
「な、なんだこれ? 凄く体が軽く感じる」
「よし、んじゃちょっと外出て見ようぜ」
僕らは外に出た。すると、シンヤがちょっと走るように僕に言った。僕は言われるまま、少しジョギングする感じで走ってみた。やっぱりかなり体が軽く感じる。
「よっしゃ、じゃあ全力で走ってみてくれ!」
「分かった」
僕は足に力を入れて目いっぱい早く走った。……今まで感じたことのないスピード感だった。自分の足で走ってるとは思えない軽さだ。風景が変わる速度に快感さえ覚える。
「よし、次はそこにあるポリタンクを持って見てくれ」
ポリタンクには水が一杯に入っていた。普段の僕ならとても持ち上げられないだろう。僕の貧弱さは群を抜いているのだ……。しかし、僕は軽々とポリタンクを持ち上げることに成功した。
「じゃ、電源切るな」
シンヤはそういうと、僕の返事を待たずに電源を落とした。
「うわあ!?」
僕は急に重くなったポリタンクを支えることができずに落としてしまった。落ちたポリタンクは僕の左つま先に直撃した。
「いたたたたたた! シンヤ、いきなり電源を切らないでくれよ。危ないじゃないか!」
「す、すまん……まさかポリタンクひとつ支えきれないなんて思わなかったから……」
く、くそ、どうせ僕は貧弱だよ……
「シュウ、さすがにちょっと運動した方がいいぜ? 小学生並みの体力しかねえじゃねえか……」
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