第20話 ファミレス
さて、2限目も終わり、昼休憩となった。僕はシンヤとともに大学の近所にあるファミリーレストランに向かっていた。
「なあ、シュウよう、お前、髪の毛染めねーの?」
「いや、僕は染めるつもりないよ。あんまり目立ちたくないし」
「はあ、良い子ちゃんだなあ、お前。せっかく大学生になったんだぜ? しかも普通の人より早く。これを有効活用しない手はないぜ?」
「まあ、たしかに」
「じゃ、染めちゃおうぜ。茶髪でも良いからよ」
「いや、遠慮しとくよ。茶髪にしちゃったら、この学生服に似合わないだろうし」
「そういや、お前、わざわざ制服買ってんのな、見てるだけで固苦しいぜ」
道中、シンヤと話していたが、どうやらシンヤは僕が思う不良ではないようだ。多少、言葉づかいはぶっきらぼうだが、人をバカにしたり、傷つけたりするような言動はない。僕と同じで一年間、中学校に通っていたそうだが、その時はサッカー部に所属していて一年でレギュラーだったそうだ。その頃は髪の色も黒だったらしい。大学進学に伴い、髪を金色にしたようで、不良っぽい服装もファッションでやっているようだ。
「お、見えてきたな」
5分ほど歩いただろうか、ファミリーレストランが視界に入る。入口前には赤髪のポニーテールの少女が立っている……赤崎さんだ。
「オッス、待たせたな。レオナ!」
「フン、大して待ってないわよ」
「なーんか、不機嫌だな、どうしたんだ?」
「どうしたってあんたねえ……。なんなのよ、その頭は!?」
「あー、聞こえねー」
シンヤは耳の穴に指を突っ込み、しらばっくれる。
「ちゃんと聞きなさい!」
赤崎さんがシンヤの腕を払い、耳から指を外させる。
「別にいいだろ!? 俺達大学生だぜ、この機会に髪染めないでいつ染めるってんだ?」
「自由を謳歌したいのは結構よ、でも、その髪と服装、まるっきり不良じゃない! 人に不快感や威圧感与えるような格好すんじゃないわよ!」
「まじめちゃんはこれだから…… 大体お前も髪の毛赤いじゃねえかよ」
「まじめであることを茶化すんじゃないわよ! そして私の髪は地毛よ! 知ってるでしょうが!」
「ちょっと二人ともストップ、ストップ」
僕はファミレスの入り口でケンカする二人を止めに入った。明らかに他の人の迷
惑になっている。
「僕、もうお腹すいちゃったよ。とりあえず中に入らない?」
僕はそう言うと、半ば強引に二人を引っ張って店内に入った。店員に案内され、席に着くが、二人はまだ言い争っている。いや、言い争っているというよりも、赤崎さんがシンヤに説教しているという方が正しいだろう。
「まったく、久しぶりに会うから、少しは大人になってるかと思えば……前の方がまだましだったわよ」
「大人になってるっての。身長も5センチ伸びたんだぜ!」
「精神的なことを言ってるのよ! 分かってるでしょうが!」
「はあ、おかんみたいなこというなよなあ、別にいいだろ、服装くらい」
「おかんみたいで結構よ。はるかさんにあんたのこと、よろしくって言われてるんだから!」
「おふくろに!?」
「そ、アンタが悪さしてたら躾けるように……実家に帰ったときにお願いされたわ。アンタが金髪にしてること、はるかさん知らないわよね、報告しようかしら?」
「そ、それは勘弁してくれ……」
「なら、明日までに染め直してくること!! いいわね!」
「くっ……」
母親の名前を出されたら、急にシンヤのテンションが変わったな……相当に母親が怖いようだ。それにしても、本当に赤崎さんはシンヤのお母さんみたいだな……
「天野君も不良みたいな格好はやめた方が良いと思うでしょ?」
こっちに話が振られてきた。まあ、金髪はやめた方が良いと僕も思う。だけど……
「まあ、服装くらいは良いんじゃないかな?」
「さっすが、シュウ! 話が分かるじゃねえか!」
「はあ、甘いわよ! 天野君! 服装の乱れから心の乱れは来るのよ」
服装か……そう言えば、赤崎さんも僕と一緒でこの学園の制服を着ている。川永学園のマークが小さく入っている何の変哲もない黒色のセーラー服だ。
「さてと、それじゃメニューを決めましょうか!」
話が落ち着いたので、それぞれ、昼食を注文する。このファミレスの目玉商品はチーズ入りハンバーグだ。過去に何度か食べたことがあるが、シンプルにおいしい。値段も高くないので、僕はこれを選んだ。赤崎さんはうどんを、シンヤはポークステーキを選んで注文した。
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