第12話 洗脳?
「赤崎さん、変なことを言うようだけど僕はドMじゃないんです」
「知らないわよ」
赤崎さんが「こいつは突然何を言い出すんだ?」というような目つきで僕を見てくる。この1週間自分はドMじゃないと言い聞かせていたせいで、つい、口から出てしまった。僕は慌てて話を続ける。
「ま、まあそんなこと知らないと思うけど、少なくとも栗江に命令されるがままに動くような人間ではないんです。あいつと同居して1週間、パシリみたいな扱いを受けて、あいつの言動にムカつきながらも我慢していたんです。でも赤崎さんが部屋に入ってくる少し前、我慢に限界が来て言い返そうとしたんですけど……声が出なかったんです。出そうと思っても。ビビって声が出ないとかそんなんじゃなくて。まるで無理矢理口を押さえつけられるようなそんな感覚が……」
「やっぱりそんなことをされてたのね」
赤崎さんが自分の頭を手で押さえてやれやれといった感じで首を横に振る。
「それがあいつの研究なのよ」
「研究? なんですかそれ」
「あいつの研究が人間洗脳についてなのよ。趣味悪いでしょ?」
洗脳だって? テレビでたまにやってる催眠術的なイメージが僕に浮かぶ。
「……でも、僕は別に栗江になにかやられたわけじゃない。一体どうやって……」
「天野秀一郎……天野くんと呼ばせてもらうわ。天野くんは光過敏性発作って知ってるわよね?」
光過敏性発作。たしか数十年前に国民的アニメで起こったことで有名だ。ネットのブログ記事で見たことがある。赤と青の強烈な光がアニメ内で点滅を繰り返してしまったことによってそれを見ていた子供たちがてんかんのような症状を起こし、何人も病院に搬送されたってやつだ。
「知ってますけど、それが何か関係あるんですか?」
「光過敏性発作を出したのはあくまで例よ。あの現象のように人間の脳ってのは特定の光を受けることによってダメージを負ったり、逆に快感を得たりするわけよ。光だけじゃないわ。音、におい、温度、味とか、それらの五感に働きかけて相手の心をコントロールする……それがあいつの研究ってわけ」
マジかよ。そんな魔法みたいなことができるものなのか? だが、僕が声を出せなかった理由として少しは納得できる。つまり、栗江は僕の気付かないところで光やら音やらにおいやらで僕が声を出せないようにコントロールしたってことなのか? にわかには信じがたいが……
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