第6話 寮室前
「うわあ! ごめんなさい!」
僕はすぐに手を目に当て彼女を見ないようにした。花岡さんはすぐに部屋の中に入り、扉を閉めた。僕は部屋の外で待機することになった。あれは不可抗力だ。僕にはどうすることもできない事故だったんだ。僕は僕に言い聞かせた。
そもそもなんであの子は着替えている最中なのなら、鍵を閉めなかったんだ。それに声をかけられた時になんで入らないようにこちらに言わなかったんだ。さっぱり意味がわからない。
大体、部屋の同居人は普通、同性同士を組ませるものだろ。なんだって、寮側は僕と女の子を一緒にしたんだ。不可解なことが多すぎる! そんなことを考えていると……
「おまたせ! もう入っていいわよ」
花岡さんがドアを少し開けて僕に声をかける。
「失礼します……」
僕は恐る恐る室内に入る。女の子が服を着ていることを確認し安堵する。
「それじゃ。二人仲良く寮生活を送ってね」
花岡さんはそう言って苦笑いしながら部屋から出て行った。
「ええ!?」
何の説明もなしに置いていかれては困る。いや説明されても困る。女の子と一緒の部屋で過ごすなんてどう考えてもおかしいし、まずいだろ。僕はすぐさま通路に飛び出して花岡さんを呼び止める。
「花岡さん!これはどういうことですか!? 女の子と一緒なんて聞いてないですよ!?」
「やっぱりそうなるわよねえ」
花岡さんがため息を付きながら話す。
「私も説得したんだけどねえ。他にも女性の入寮者がいるからその子と一緒の部屋になるようにね」
花岡さんの話を聞くと、栗江さんが他の女性と相部屋になるのを頑なに拒んだため、部屋が一つどうしても足りなくなったのだそうだ。それを栗江さん本人に伝えたところ、男子と相部屋になっても構わないと言い出したらしい。花岡さんは悩んだ挙句に新入生で年少者である僕を当て込んだということだ。
「困りますよ。それに話しが違うじゃないですか。学士4年間を寮で過ごす人は少ないっていってたじゃないですか! それなら余った部屋くらいあるでしょ?」
「秋とか冬になれば二人暮らしが嫌で出ていく人も出てきて余るんだけどねえ。5、6月くらいまではいっぱいに埋まるんだよ。ほんっとに悪いんだけどさ、部屋に余りがでるまで我慢しておくれよ。このとおり」
花岡さんは顔の前で手を合わせて僕に懇願してくる。相当に困ってる様子だ。
「いつまでそこでしゃべってるの?」
声がした部屋の方を振り向くとショートの黒髪に眼鏡をかけた少女が不機嫌そうに佇んでいる。
「部屋に入らないの?」
彼女は威圧的に僕に問いかけて来る。やっぱりさっき下着姿を見てしまったことを怒っているのだろうか? 僕は思わずとっさに答えた。
「いえ、入らせていただきます!」
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