第5話 寮と管理人

 管理人室からふくよかな40歳くらいのおばさんが出てきた。


「私が寮母の花岡です。直接会うのは初めてね。何年ここに住むかは知らないけど、それまではよろしく頼むわね」


「こちらこそよろしくお願いします。何年ここに住むかは知らないけどっていうのはどういうことですか?」


「あはは、最近は二人部屋が嫌になる子が多くてね! 1、2年したら寮から出て他のアパートに住みだす子が多いのよ!  学士の4年間住み続けるっていう子は珍しいわよ。天野君、確か寮に来るのも今日が初めてよね? どうかしら寮の雰囲気は?」


「はい。こんなこと言ったら失礼かもしれませんが、見た感じ思ったより綺麗っていう印象です。むしろ新しいように感じます」


「そうね。この寮は比較的最近できたのよ。まだ10年経ってないんじゃないかしら。」


 寮というから、もっと汚くて古い感じを想像していたのだが、思ったより新しい建物だ。鉄筋コンクリート造でしっかりした造りになっているようだ。


「それじゃ、部屋の方に案内するわね」


「はい。ところで僕の部屋の同居人はどんな人なんですか?」


 やっぱり気になるのはそこだ。これから少なくとも1年間は同じ人と相部屋になると聞いている。良い人なら最高だが、変な人と一緒だと辛い。変人でないことを祈る。


「そうねえ。あなたと同じで若くして川永学園に合格した子よ。年齢もあなたと同じ。今年14歳になる子よ。今年2回生になるわ」


 僕より一年先輩の同い年か、仲良くなれたらラッキーだなあ。学園のことについて分からないことも年上の先輩より聞きやすいだろうし。


「ここだよ」


 花岡さんが、ドアを指さす。


「栗江さん。入るわよ」


 同居人であろう名前を花岡さんが呼ぶ。


「返事が返ってこないですね。留守ですかね」

 

 僕がそう言うと、


「いつものことなのよね。ちょっと待ってて。入るわよ。栗江さん!」

 

 花岡さんはそういうと勢いよくドアを開ける。すると、部屋の中には下着姿の女の子が突っ立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る