第3話 川永学園受験
……それからの僕は鬼気迫る勢いで勉強したらしい。したらしいというのは僕自身にそんなつもりはなかったからだ。小学校から帰ると友達と遊ぶことなく、勉強に励んだ。
「また、高校生の勉強をしてるのか?」
父さんが僕の部屋に喋りながら入って来た。
「母さんが心配してたぞ。他の子供たちみたいに外で遊んだり、ゲームしたりしないから……」
「母さんには大丈夫だって言ってるんだけど……、勉強して知りたいんだ。死を克服する方法を」
「とても10歳の子が話すこととは思えんなあ。我が子ながら変わった子だよ、お前は……」
でもな、と父は続ける。
「お父さんは少し、お前に期待しているんだ。変わった子ではあるが……、凄いことをやってくれるんじゃないか、とな。……親馬鹿かもしれんがな」
そう言うと父さんは僕に1万円を渡してくれた。
「母さんには内緒だぞ。これで好きな本を買いなさい」
そう言うと、父さんは部屋から出て行った。その後も父さんはたまに僕にお小遣いをくれた。僕は貰う度に教科書や参考書を買った。父さんの協力もあって、中学1年になる頃には、大学レベルの数学、物理、生物等のいわゆる理系の専攻科目について理解できるようになっていた。
「アメリカの大学に留学したいんだ」
中学1年になってすぐ、僕は両親に相談した。父さんは……そうか、と一言呟いた。こうなることがわかっていたかのような反応だった。
「結論から言おう。アメリカ留学はさすがに反対だ。経済的に厳しいし、一人で外国住まいをさせたいとは思わない」
父さんが反対した。仕方ないことだ。僕もダメ元で当たってみたのだ。この件はあきらめるしかない、と思ったときだった。
「だが、お前が望むなら
川永学園……、日本で唯一飛び級での進学が認められている大学……。
「本当にやる気があるなら……、この学園からでも十分に夢に向かっていけるはずだ」
後で聞いた話だが、川永学園に行かせるのも、本当は経済的にかなり厳しかったらしい。母さんは猛反対したそうだ。だが、父さんが母さんを説得して無茶を通してくれたそうだ……。息子の夢のために。
僕は川永学園を受験することに決めた。1日でも早く研究をしたいという思いを叶えるためには、選択肢はそれしかなかった。
僕は13歳の2月、つまり中学1年生の2月に川永学園の入学試験を受けた。
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