第19話:エムのいた世界

「どお? ちゃんと記録されてる?」

「大丈夫そうだな。こっちの声に反応もできてるし、初めて造ったにしては上出来だろう」

「本当は会話もできるようにしたかったんだけどね……。やっぱり難しいかな?オリオン」

「そんな表情で儂を見るな。こちとら小型飛行機の改造しかしてこなかったんだ。人型の機械人形がここまでできただけでも凄いことだろうが。もっと感謝しろ」

「オリオンの言うとおりだ。あんまりわがままを言うもんじゃない」

「だって……」

「あいつの傍にいてくれさえすればいいんだろ? 会話なんて最初から必要ないじゃないか。あまり人間に近づきすぎても今度はこっちが可哀そうだ。あいつの二の舞になるぞ」

「……そうだよね」

「あれ? これツバメさんが描いたんですか? 絵がお上手なんですね」

「ちょっと、勝手に見ないでよ!」

「見えるところに置いておく方が悪いと思いますけど。エムってあの子のことですよね? 頭文字ですか」

「前にね、聞いたことがあるのあの子の元居た世界の話。元の世界って言っていいのかわからないけど、あの子にとってはそこが故郷だから」

「帰りたいって最後に言ってましたもんね」

「だからね、絵本を描いたんだ。叶わなかった夢だけど、お話の中だけでも故郷に帰れるように」

「最後は新しくできた友達の力を借りて故郷に帰るか……。これって俺たちのことか?」

「もちろん。チームメイトだったんだし、友達でしょ?」

「ちょっと美化しすぎじゃない? 私たちってそんなに仲良かったっけ?」

「今も一緒に活動しているんだから十分仲良しじゃろ」

「オリオンもね」

「それはどうも」

「その絵本はこの子に預けるの。いつかあの子が目を覚ますようなことがあれば渡してほしいんだ。きっとその時には私たちはもういないだろうけど、それでも君のことを想っていたよって伝わるように」

「恥ずかしいー」

「うるさい!」

「ツグミさん、あんまりツバメさんをからかわない方がいいですよ。彼女怒ると怖いので」

「ツグミの方が怒らせたら立ち悪いじゃない!」

「お前らいい加減にしろ。ハントの最終調整がまだ終わってないんだ。このくだらないやり取りも全部録画されてるからな。後で恥ずかしい目に遭うのは自分自身だぞ」

「トキさんは手厳しいですね。もう少しふざけましょうよ」

「興味ない」

「静かにしろ! 集中できん! お前らは昔から仲がいいのか悪いのかわからんのう」

「仲いいよ」

「そこそこ」

「またそんなこと言って! とにかく、あの子のことよろしくね。頼りない作成者達で申し訳ないけど、きっと機械が暮らしやすい世界を造ってみせるから」

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