第7話 野球部への勧誘

 学校までは家から徒歩十五分程度、コンビニに寄って時間を使ってしまったけど…… それでもどうやら生徒、先生が来る前に、一番に到着できたようだ。時間は7時ジャスト!! 予定通りだ。ちょうど警備員のおじさんが正門を開けようとしているところだった。


「おお、早いねえ。朝練かい?」

 警備員のおじさんが話しかけてきてくれた。

「いえ、まだ部活には入ってないんです!!」

「へえ、それならなんでまた?」

「これを配るためです!」


 そう、昨日早く寝て、今日早起きしたのはすべてこの作戦のため……。私は今朝早起きして作った入部勧誘のポスターをおじさんに見せる。


「なるほど、部活の勧誘ね。ところで何の部活なのかな?」

「いやだなあ! ここに絵描いてるじゃないですかあ! 野球部ですよ! 野球部!」

「え……?」

「ほら。これ。バットとボール!」

「…………配る時は野球部ですって言って渡す方が良いと思うよ…………」

 そんなに絵下手なのかな…………?


 警備員のおじさんは門を開け終わると正門前の小さな警備室に入っていった。私は自前の下手な絵の勧誘ポスターを手に生徒たちの登校を待った。絵は下手かもしれないけど、警備員さんの言うとおり野球部を名乗って渡せば問題ない。ポスターには私のクラスと名前、そして入部者募集の文言を入れている。今日の昼休み、放課後には人が来てくれるはず!

 そんなことを考えていると一人目の生徒が登校してきた。


「野球部です!入部お願いしまーす!」

 私はとびきりの笑顔でチラシを彼女に手渡そうとした……が、彼女は私に一瞥もせずに歩き去って行ってしまった。なんなのぉ! 感じ悪いっ! 挨拶返すくらいしてくれてもいいじゃん! お嬢様だからって鼻に掛けてんじゃないの?


「ま、いいか。切り替え切り替え! 」


 生徒はいくらでもいるんだから。気にしてもしょうがない。私は両頬を手でたたいて気合を入れ直した。

 お、二人目の生徒のお出ましだ。


「野球部でーす! 入部お願いしまーす!」


 またしても、一瞥もくれずに歩き去っていく。


(なんなの? お嬢様たちは一般人と話してはいけないルールでもあるの? だいたい、中途入学組とエスカレーター組で制服が微妙に違うっていうのもなんとなく気に入らない!)


 不満はあるけど、ここは抑えなければ……とにかく、まずは野球部の結成が最重要任務だからね。野球部が出来たら思いっきり文句言ってやる!

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