第4話 やっぱり野球部ないんだって……

 野球部がないとう事実は私にとってあまりにショック過ぎた……。私もさすがに野球部がない学校で野球部に入りますと言うほど馬鹿じゃない。事前にこの学校については調べていた。入学者募集のパンフレットには部活動の欄に女子硬式野球部の記載はあった。……なのに、どうして……。


 私は事実を確認するため、職員室に向かった。担任の先生に話を聞くと、


「野球部は去年の12月に廃部になったんだ。もともとここ数年、野球部員は素行不良の生徒が多く、学園内での評判はよくなかった。そんな中、去年の秋、部員同士のケンカが置き、けが人が出た。その際に学校が調査したら、部室からたばこが発見されたんだ。事態を重くみた学校側は12月をもって、野球部を廃部にすることに決めんだよ」

 と説明してくれた。


 ではなぜ私はそのことを知ることができなかったのか、だ。私のことを不憫に思ってくれたのか、私の質問に先生は丁寧に答えてくれた。


「一つは学校側が問題を可能な限り公表しなかったんだ。なんせ、この華の峯女子学園はお嬢様学園で世間には通っているからね。そんな学校で暴力事件と喫煙疑惑が出るというのは学園の名前に傷がつく。対外的にまずいのさ。」


 私は力なく頷きながら話を聞く……。先生はそれを見ながら話を続けた。


「じゃあ、新入生にくらい伝えてよ。という話になるだろうが、実は伝えていたんだ。スポーツ推薦で野球部に入部する予定だった子達にはね。そういう子達には個別で野球部がなくなることを伝えたんだ。その上で華の峯に入学するか確認するためにね。入学を拒否した子達には保護者からクレームが来ないよう華の峯の持っているパイプを使って野球部がある他の高校に進学できるよう取りはかったんだ」


「廃部になった後、野球部員だった人はどうなったんですか?」


「暴力を振るった生徒についてはもちろん退学、問題に関わらなかった部員については他校に転校したり、自主退学したり、ほぼ全員この学園を去ったよ」


 つまり、残った部員で野球部復活ということも難しそうだ。


「さらに付け加えるなら、一般入学で野球部に入るなんて子が今までいなかったのも君に伝わらなかった理由だね。推薦組以外で女子野球部に入るなんて変わり種は今までいなかったもんだから、積極的には一般入学生徒には伝えなかったんだ。さっきも言ったけど、なるべくこの学園で不祥事が起こったことは世間に広めたくなかったからね」


 それは隠ぺいになるんじゃないのと不満に思ったけど、それよりも気になる言葉があった。


「積極的には伝えなかったとはどういうことですか?」


 そうだ、なぜクラスメイトは野球部が廃部になったことを知っていて、私は知らなかったんだろう? 一年E組は中途入学の生徒しかいないと聞いた。なら条件は私と同じのはず……。この質問に先生はこう答えた。


「これは言いづらいんだけど、桃井さん、君、合格後に送付した書類はしっかり読んだかな? 入学募集のパンフレットの時はまだ廃部していなかったから君のいうとおり部活動の欄に女子野球部は記載してたんだけど、合格後に送付した書類にはこういう風に記載されてたんだよ。」


 先生は書類を出して見せてくれた。そこには女子硬式野球部については12月をもって廃部となりました、と記載されていた……。

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