金に溺レてトチ狂イ。

須藤

リストラ篇

早く自立して、母さんに楽をさせてあげるんだ。


大学を卒業して一流企業に入社、その後は持ち前の明るさとトーク力のおかげでトントン拍子で出世した。

27歳の時に結婚もして子供も2人できて、幸せな家庭そのものだった。



その宣告は突然だった。


人事部の人に呼び出されて個室で言われた言葉。衝撃的すぎてよく覚えていないが、リストラだということだけは理解出来た。

信じたくなかった。嘘だと思いたかった。悪い夢なら覚めてくれと。

だが嘘でも夢でもなく、正真正銘の現実だった。

両肩に象でも乗っているんじゃと思うほど体が重く、そんな体を引きずるようにデスクを片付けた。



リストラから3ヶ月後のこと。

ネットサーフィンをしているとある投資の記事を見つけた。

どんな手を使ってでもお金を稼ぎたかった俺は、早速その投資をやってみることにした。

家族には内緒だ。正直なところすごく怪しい記事だった。だから言ったら反対されるに決まっている。

怪しいものに内緒で手を染める。そんな罪悪感はあったけど、もし記事の話が本当なら会社勤めしていた時よりも収入は遥かに上回る。

家族の為、母さんを楽にさせてあげる為、そう言い聞かせて投資を始めた。



**



男が投資を始めてから5年が経っていた。

その投資はすぐに成功し、男は大金を手にした。

以来、すっかり投資にハマった男は次から次へと手を広げ、金を荒稼ぎするようになった。


「金が全てだ!金を持っている俺は偉い!すごく偉い人だ!」


子供たちには自分はすごく偉い人なんだと、だから俺の言うことを聞けとまるで道具のように扱うようになっていた。

奥さんはそんな男から逃げるように出て行き、現在は別居状態だ。

男の母は、男が金稼ぎに夢中になっている間に孤独死したらしい。



真面目な好青年だった男は、その後、DVで警察に捕まったと噂されていた。





金に溺レてトチ狂イ。~リストラ篇~





設定(5年経過後)

男:37歳

奥さん:39歳(社内婚の後寿退社)

子供:8歳女、6歳男

男の母:享年56歳

デキ婚、結婚して数ヶ月後に夫が疾走、借金返済のために昼夜問わず働く日々だった

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金に溺レてトチ狂イ。 須藤 @NEXT-613

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