第2話
「この男を消して欲しいの」
対面の椅子に座る依頼人は、1枚の写真を机に載せた。
珈琲を啜りながら写真を手に取る。
「……なかなかに物騒な話だが」
殺しを忌避している訳ではない。この仕事柄、別段珍しい案件でもない。物騒なのは写真に写る男だ。
「俺の記憶が間違っちゃいなければ、こいつはエドワード・ノリックじゃないのかい?」
エドワード・ノリック、このファーバルで指折りの大企業「B&N」の取締役。表じゃ人道主義を掲げ、慈善事業等にも力を入れて、今度は政界に進出しようとしている今波に乗っている人物だ。まぁこちらの業界じゃキナ臭い噂がちらほら聞こえて来るんだがな。
「ええ、あのエドワード・ノリックよ」
依頼人はさも当然と言う口調で答える。
「参ったな、大物過ぎる。依頼を受けるにしても後始末まではウチじゃ出来ねぇ。それに正義の味方とは言わねえが私怨だけの殺しはウチの
丁重にお断りさせて頂こう。危ない橋を渡るつもりはない。
手にした写真を返そうとすると、依頼人はとんでもない一言を口にした。
「私の名前はセディナ・ボストニアよ」
「ボストニア……あぁそう言うことかよ、理解したよお嬢様」
「あら嬉しいわ。聡明な殿方との会話は楽しいわね」
人形みたいに綺麗な顔から妖艶な微笑を浮かべたセディナ。まだ少女だっていう年齢なのに、古狸どもを相手にしている気分だ。末恐ろしいたらありゃしない。
「そんじゃ仕事受けるにしても詳しい
「ええ。では昔話から始めましょう――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「
「物々しい警備だねぇ、愉しすぎて涙が出そうだ」
とあるビルの屋上で俺とアヴィは双眼鏡を片手に
「しかも魔術師まで居るときた。こりゃ報酬上乗せしてもらわなきゃならないな」
魔術師と聞くと杖を持ってローブを着ているひ弱な印象があるだろう。俺だってこの世界に来るまではゲームで慣れ親しんだイメージだった。
しかしながら、この世界の魔術師はちょっと違う。魔術っていう個人が持つには強力過ぎる暴力装置を武器に、己の生存性を高めるための戦闘訓練を受けた
「お
「あらリベィ、依頼人のこと疑ってたの?」
「当たり前だろ、話し半分で裏付けもなきゃこの家業は生きていけない。全てを鵜呑みにするのは
「そうね、間違いないわ」
B&N社、正確に言うとボストニア&ノリックカンパニー。ここ数年でファーバル屈指の大企業まで乗し上がった新興企業だ。そして筆頭経営者であったロバーツ・ボストニアが謎の事故死を起こしている。世間一般じゃ盟友だったエドワード・ノリックが遺志を継ぎ、
だが、
そんなエドワード、極めつけにまだ十代前半のセディナを嫁にしようってんだからどうしようもない。建前は「亡き盟友と血筋を一つに」との賜ってらっしゃる。
素敵な
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