第6話 翻弄する檸檬
貴女はいったいどんな味?
「一番偉くなったら羽は生えない。王様だって」
ファンタジー小説の話かと思ったが、違うらしい。彼が言うには羽とは自由に生きること、もうだいぶ自由に羽ばたいていると思うけど。大真面目にこんな事を突然話す。彼が好きで仕方がなかった時間があった。たしかにあった。それでもその熱は時間とともに醒めてきている。
ねえ、レモンかけるんだっけ?
あ、唐揚げの話ね?
わかってますよ。前も言ったけどうちはどっちも派だよ。
そっか、じゃあレモンあげる。自分の皿の中で使うがいいよ。
マヨネーズ一択だもんね。
おうよ。
だからそんな体型なんだよ。
おうよ。検診に引っかからなければそれでいいんだ。
いつか後悔するよ?
目の前の人はぽっちゃりしている。別に体型は気にしない。私の話を聞いてくれない。彼を密かに王様と呼んでいる。体型と話し方とみんなに慕われている人柄から。ちょっとずるい。
王様の珈琲には、ミルクを加えて砂糖を非常にたっぷり入れます。君のために作るコーヒーを、私は絶対飲まない。酸味と苦味の死んだコーヒー。
私に振り回されたヒトの数は星ほど、豆ほど、種ほど。小さくったって爆発を起こせる。私が我慢すればいいのだ。本当はヒステリー女。だけど王様に気に入られるため言葉を選ぶ。自信がなくなっていく、このまま2人でいられるのか。そんな自身に一番いらだっている。羽があるなら飛び立ちたい。優しい王サマのいないところまで。
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