0123あふたー「あどばいざーフェネック」

「先にここを削っとくっすか…?いや、でも後の事を考えると…うーん、悩むっす…」


「………」



みずべちほーで得意の建築に勤しむアメリカビーバーと、それを近くに座って眺めているフェネック。



次は何を作ろうか悩んでいたビーバーに、通りかかったフェネックが『見晴らし台を作れば』と提案し、ビーバーがそれを受け入れた。



しかし、1時間ほど経っても建築が一向に進まない。

ビーバーの心配性な性格が、今回も遺憾無く発揮されていた。

好奇心で眺めていたフェネックも、少し呆れている様子だ。



「いや、でもそうすると次の手順が大変に…」


「……取り敢えず模型から作って見たらいいんじゃないかなー」



延々と悩んでいるビーバーに、フェネックがたまらず声をかける。



「ああ、申し訳ないっす…せっかく見てくれているのに迷ってばっかりで…」


「私は気にしないけどさー、悩みっぱなしだとビーバーも疲れるでしょー」


「そうっすね…。模型、作ってみるっす!」


「がんばってー」



再び作業に入るビーバー。

それから数十分で見晴らし台の模型が完成した。

全く悩むことなく、スムーズに。



「おー、流石に早いねー」


「模型だと迷うことなく作れるんすけどね…本番だとどうしても不安になってしまって…」


「うーん。いつもはどうやって作ってるのー?」


「時間をかけて何とか完成させるか、プレーリーさんや他のフレンズに手伝ってもらったりしてるっすね。今日はプレーリーさんもお出かけしてて1人っすけど…。悩まずに1人で出来たことは無いっす…」


「なるほどねー。じゃあ今日は私が手伝うよー」


「そ、そんな、申し訳ないっす!」


「大丈夫だよー。手伝うって言っても、ちょっとアドバイスしたり穴を掘ったりするだけだしねー。それに、見晴らし台作ろうって言ったのはこっちだしさー」


「…それじゃあ、お願いするっす。出来る限り1人でやるようにはするっすけど…」


「はいよー」



こうして、ビーバーとフェネックによる見晴らし台作りが始まった。


ビーバーが手を止めて悩み始めると、フェネックがこうしたらどうかと助言を出す。

フェネック自身、建築について詳しくは無いが、ビーバーの建築作業をいくつか見ているうちに、何となくわかるようになっていた。



一方のビーバーも、出来るだけ悩まないように、かつ丁寧に作業を進める。

手順は全てわかっている。

後は、自分の手をその通りに動かすだけ。

それでも悩んでしまった時は、フェネックが助けてくれた。

柱を立てるための穴も、指示をすればすぐに掘ってくれた。





日も暮れてきた頃には、珍しいコンビによる見晴らし台の作製が完了していた。



「で、出来たっす…!」


「おー、良い景色だねー」



2人は完成した見晴らし台に登り、みずべちほーを見下ろす。

遠くにフレンズの姿も見える。

風も気持ちいい。夕日も綺麗だ。

まさに、2人の理想通りの物となった。



「フェネックさんが手伝ってくれたおかげっすよ…!おれっちだけじゃ、また数日悩んで手をつけられなかったっす…」


「いやー、私はほとんど何もしてないけどねー。でも、達成感はあるかなー」



しばらく、2人は沈む夕日を眺めていた。

作った者たちにしか味わえない、疲労と達成感と喜びが入り混じるような、特別な雰囲気に包まれる。





ふと、フェネックが遠目に何かを発見した。



「……あ」


「どうかしたっすか?」


「んー、大したことじゃないんだけど」



そう言いながら、フェネックは視線の先を指さし、ビーバーにその方を見るように促す。


そこに居たのは…溺れているアライグマの姿。



「…って、大変じゃないっすか!?今すぐ助けに行かないと…!」


「大丈夫だよー。アライさん、泳げるしー」


「そうなんすか…?」



ま、助けに行くけどねと、フェネックはするすると見晴らし台を降りていき、ビーバーもそれに続く。

泳げる自分も行った方がと提案したが、作業で疲れているだろうからと断られてしまった。



「あ、あの、今日は助かったっす!また今度お礼させてほしいっす!」



見晴らし台に背を向けて歩き出すフェネックに、後ろから感謝を述べる。

フェネックはお礼なんていらないよと言いつつも、でも、と言葉を続ける。



「もし今度何か作る時に悩んだら、1人で迷わずに誰かを頼るといいんじゃないかなー。もちろん、私やアライさんでもいいしねー」



それだけ言い残して、フェネックはアライグマの元へ歩き去って行く。





「…その時は、またお願いするっす」





夕日に照らされる彼女の背が見えなくなるまで見送った後、ビーバーは小さくそう呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぱびりおんの日常 リュエン @ryuen_kkym

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ