0569あふたー「おもいでばなしならいくらでも」
「ほう。それで、どうなったのですか?」
「どうなったと思う?」
「もったいぶらずに教えるのです」
こうざんの頂上付近。
道沿いに生えた1本の木の枝に、腰掛ける2人のフレンズ。
ワシミミズクの助手と、旅人のピューマ。
様々な場所を旅して来たピューマに興味を持った助手が、思い出話を聞いているところだ。
「ワタシが言ってあげたの。じゃぱりまんはもっと用意しておくべきってね」
「ロッジの朝食のじゃぱりまんがある時から2個増えたと聞いていましたが、お前が原因だったのですか」
「おかげ、と言ってほしいな。食いしん坊の子が泊まりに来るのを考慮するべきだったんだよ」
「ふむ…お前は中々頭が良いですね。我々には及びませんが」
「嬉しいこと言ってくれるね〜」
「もっと聞かせるのです。今日は暇なので」
「長にも暇があるんだ。いつも忙しいものだと思っていたけど」
「長にも休息は必要なのです。頭を使いすぎるのも考えものなのです」
「ふふ、それもそうか。じゃあ、次はさばくを旅した時の話でもしようかな」
──さばくちほー。
砂や岩石で覆われた大地、視界が歪む程の熱。
他のちほーに住む動物は勿論、フレンズも足を踏み入れることを躊躇うような場所。
そんな灼熱の大地を、ピューマは歩き続ける。
『流石に暑いな…。ここらでちょっと休みたいけど…』
どこか休息を取れる場所は無いかと辺りを見回す。
すると、遠くに洞窟があるのが見えた。
『良い感じの洞窟発見!もしかしたら素敵なアミーゴに会えるかも。行ってみよう!』
「ピューマは目も良いのですね」
「他のネコ科の子よりはね」
「色々と便利な身体なのです。不便なことはあるのですか?」
「無いことは無いかな。例えば…──」
洞窟の前までやってきたピューマは、困り果てていた。
遠目ではわからなかったが、この洞窟、思っていた以上に狭い。
『これじゃ、洞窟というより巣穴って感じ…休めそうに無いかなぁ』
「ワタシ、少し身体が大きいから、他の子の作った巣穴が自分に合わないことがよくあるのよ」
「そういえば、前にそんな話をプレーリードッグから聞いたことがあるのです」
「あぁ、そんなこともあったなー」
「それで、結局さばくではどうしたのですか?」
「それがね──」
休息が取れないことにうなだれるピューマに、背後から1人のフレンズが声をかけた。
『やぁ、おねーさん。奇遇だねー』
『フェネックじゃない。…今日は1人なんだ?』
いつもならアライグマがそばに居るが、今日は居ない。
流石のアライグマも、さばくに来るのは嫌だったのか。
『そうだねー。さっきまでアライさんも一緒だったんだけど、1人で走って行ってしまったのさー』
『来てたんだ…。探さなくていいの?』
『探してたらおねーさんを見かけたのさー。まぁ、ほっといても戻ってくるけどねー』
『相当暑いけど、アライグマは平気なの?あの子、暑い場所が得意ってわけじゃないでしょ』
『アライさんは頑丈だから大丈夫だよー』
『慣れてるわね…』
『まぁねー。おねーさんは今日も旅の途中ー?』
『うん。でも、休憩出来る場所がなくって…困ってたところ』
『じゃあ、わたしの休憩場所まで案内してあげるよー』
『ほんと?助かるわ!』
『さばくはちょっと詳しいからねー。任せてよー』
「アライグマの頑丈さには我々も一目置いてるのです」
「このあと、平気な顔して合流したからね。少し息は切らしていたけど」
「慣れない場所での暮らしは寿命を縮めますが…お前やアライグマを見ていると、案外大丈夫と思えてしまうのです」
「そんなことないよ、暑いものは暑いし。ゆきやまを旅した時だって、大変だったもの」
「ほう、その話も気になりますね。聞かせるのです」
「いいよ。確かあの日は──」
長と旅人の話は、空が茜色に染まるまで続いた。
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