0275あふたー「さばんなをかけぬけて」

「はぁ…はぁ…負けたであります…。やっぱりガゼルどのには敵わないでありますなー」


「今日のぼくは調子が良いからね!でも、プレーリーも土の中なのにとっても速かったよ!」





さばんなちほーの草原で談笑する2人、トムソンガゼルとオグロプレーリードッグ。

今日は調子が良いというガゼルに、プレーリーはかけっこに誘われた。



「じゃあ、ぼくは次の相手を探そうかな!」


「わたしも、向こうで穴を掘ってくるであります!では!」


「またねー!」



地上vs土中を制したガゼルは、プレーリーに別れを告げて歩き出す。


誰か居ないものかと辺りを見回していると、前方に影。

早速走り寄り、声をかける。



「おーい!カラカルー!」


「あら、ガゼルじゃない。今日も元気ね」



自分の大声に対し、立ち止まって振り向くカラカル。

彼女の目の前まで行き、早速勝負を仕掛けてみる。



「今日は特に元気なんだ!というわけで、ぼくとかけっこしない?」


「いいわよ。サーバルも居なくて、ちょうど暇してたのよ」


「やったー!じゃあ、行くよー!」


「負けないわよ〜!」


「よーい…ドン!」



さばんなを思い切り駆け抜ける2人。

ゴールは遥か前方にある大木。


本気で走っている2人に、大木があっという間に迫っている。

僅かにガゼルがリードしている展開。



「(流石ガゼル、このままじゃ勝てないわね…そうだわ)」



負けず嫌いなカラカルは、1つ策を思い付く。



「(……今よ!)」



ゴール直前、カラカルは地面を蹴りだし、前方へ勢いよく飛んだ。

まるで自分をロケットにするかのような策に、前を…いや、今となっては後ろを走っているガゼルが、驚いた表情をしている。


そして、ゴール。

カラカルの作戦勝ちである。



「ふふん、あたしの勝ちね」


「すごいやカラカル!まさか調子の良いぼくが負けちゃうなんて」


「賭けだったけれどね。もう少し距離があれば、きっと負けていたわ」


「あはは、そうかなぁ。次からはジャンプ対策しないとだね」


「あら、お手柔らかにね?」



遊んでくれてありがとうと、ガゼルは手を振ってカラカルと別れ、次の場所へ移動する。

というのも、次の相手は既に決まっていた。



「やあ、シマウマ!」


「……トムソンガゼルですかー。ぼーっとしてて気付きませんでした」


「いつも通りだね!」


「あなたもいつも通り元気ですねー」


「今日はいつも以上に元気だよ!というわけで、いつも通り競走しよう!」


「いいですよー。わたしも今日はなんとなく調子が良い気がしていたところなんで」


「それは楽しみ!じゃあ、位置についてー、よーい…」







どこまでも続くさばんなの草原を、風が吹き抜けていった。

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