0060あふたー「いたずらはほどほどに」

──回っている。





目の前で、コツメカワウソが。





ぐるぐると、回り続けている。





どうしようかしら…。












コツメカワウソに、何か面白いことは無いか聞かれた。

だから、少しからかってやろうと。

目をつぶらせ、彼女の尻尾を、そっと前へ持ってきて。

目の前の尻尾を捕まえられるかな?と言ってみた。



すると彼女は、物の見事に引っかかった。

自分の尻尾を捕まえようと追いかけ、その場でぐるぐると回り始めた。


気持ちいいくらいの引っかかりっぷりに、最初は嬉しかったが。

彼女はネタばらし…それが自分の尻尾だとわかっても、楽しいと言って回り続ける。


からかいがいのない子だなぁと思っていたが。

何秒経っても、何分経っても。



コツメカワウソが、回るのを、やめない。



彼女の中で、何かがドツボにはまったのか。

かれこれ30分は、自分の尻尾と戯れ、回り続けている。

疲れないのかしら…。



このままでは、いたずらを仕掛けた本人として、あたしもこの場から離れ辛い。

少なくとも、他のフレンズに、この姿の彼女は見せない方が良い気がする。


そう思って、色々と考えてみたんだけど…。



「ねぇ、コツメカワウソ。そろそろ違う遊びしない?尻尾を追いかけるのも、そろそろ飽きたでしょ」


「ぜーんぜん!これすっごくたーのしーよ!きゃははは!カラカルもやろーよー!」


「あ、あたしは遠慮しとくわ…」



やめる気配がない。

これだけ楽しそうだと、無理矢理止めるのは気が引けるし…。



「あっ、カラカルとコツメカワウソ!何してるのー?」



背後から聞き慣れた声が飛んでくる。

サーバルに見つかってしまった。

いや、でもサーバルなら協力を頼みやすいかな?

一緒にコツメカワウソを止める手立てを考えてもらおう。



「サーバルじゃない。実はコツメカワウソがね…」


「あー!サーバルだー!サーバルも自分の尻尾追いかけてみようよー!たーのしーよー!」


「なにそれなにそれー!たのしそー!」



あれ、なんだか嫌な予感が…。



「カラカルが教えてくれた遊びでね!こうやって、自分の尻尾を捕まえる遊び!」


「おー!たーのしー!」














──サーバルが、回り続けている。





コツメカワウソも、回り続けている。





何がそんなに面白いのか、あたしにはわからないけど。





からかいすぎは良くない。

あたしは反省した。







その後、彼女達のスタミナが切れ始めるまでの1時間、回り続ける2人のフレンズを眺めていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る