0012あふたー「そしてつぎのぼうけんへ」
「何もなかったのだー!!!」
ジャパリカフェ内に、甲高い声が響く。
椅子から立ち上がり、両手を振り上げ叫んでいるアライさん。
「まーまー、そんなこともあるよー」
隣に座っていた私は、アライさんを宥めるように語りかける。
それを聞いて少し落ち着きを取り戻したのか、悔しそうな表情をしながらも、椅子に座りなおすアライさん。
ことは数日前。
私とアライさんは、特に何するわけでもなく、さばんなを歩いていた。
すると突然、アライさんが「むむむむむ…」と唸り出したので、どうしたのか聞いてみると。
「むなさわぎがするのだー」
「いろんな場所に行って調査するのだ!」
「こうざんやみずべにも行ってみたいのだ!」
と、言い出した。
別に珍しい事でもなかったので、いつも通り付き合ってみたものの。
1度こうざんに来た時にはアルパカが博士のところへ行っていてカフェにすら入れず。
その後向かったみずべでは、特に何も見つからないまま1日が過ぎてしまった。
結局むなさわぎの原因や面白いことの無いまま、再びこうざんへ戻ってきた私たちは、図書館から帰ってきていたアルパカにお茶をご馳走になっていた。
「あんなにたくさん歩いたのに、何もなかったのだ…」
「いつもそんな感じじゃないかなー?」
「今回はちがうのだ!アライさんの勘が何かあると言っていたのだー!」
「まぁまぁ、おかわり飲んで落ち着いてねぇ〜」
再び声を張り上げるアライさんの後ろから、アルパカがやってきて声をかける。
お茶のおかわりを持ってきてくれたようで、いつの間にか空になっていたアライさんの入れ物に注いでくれる。
「…ありがとうなのだ。大きな声を出してごめんなさいなのだ」
「いんやぁ、大丈夫だよぉ〜。心が落ち着くお茶を入れたから、好きなだけ飲んでいってねぇ〜」
崩れぬ笑顔でアライさんにそう言うと、アルパカはカフェの中の掃除に励み始めた。
「…はぁ〜、カフェはやっぱり良いのだ〜…」
アルパカの笑顔とお茶が効いたのか、アライさんにもようやく笑顔が戻る。
「今回はダメだったけど、次は絶対に何か見つけるのだ!こはんやロッジにも行ってみるのだ!」
「そうだねー、何か見つかるといいねー。私も付き合うよー」
私はアライさんと居るだけで楽しいんだけどねー…とは、口に出さない。
明日から、また長い旅が始まる予感がする。
今はカフェでゆっくりして、次の冒険に備えよう。
「そうと決まれば、今から行くのだ!フェネック、出発なのだー!」
「あれぇ、もう行っちゃうのぉ?また遊びに来てねぇ〜」
……アライさんに付き合うよー。
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