第7話

そして。

サトは旅に出ることになりました。

浩(ヒロ)たちと一時お別れする

事になっても、

ヒロたちのもとで消えてしまうのではなく

また会える。チーの、クロの

その言葉を信じて


決意した夜、

サト、チー、クロは

浩とお母さんとお父さんのお布団の上、

代わり番こに行ったりきたりして

思いっきりすりすりして

朝までくつろぎました。


「ヒロ、朝まであんまり寝れなかったみたい」サトがそう言うと

「ヒロは勘がいいから感じるのかもね」

チーがいいます。

「そうだよ、ボクがはじめて旅に出た時も

そうだったもん」クロがいいます。


じゃあヒロならわかるよね

サトが戻ってきたらわかるよね


いま三匹は家を出てお庭にいます。

いよいよ旅立ち。

決心がついたとはいえ、

何処にいくのか何処までいくのか

何があるか全くわからず

不安でいっぱいです


「怖がらなくていいよサト

ずっとついてるからね」

チーはいつも大人で優しいお兄さん。

一緒にいると安心します。

「やーい怖がり」

クロがからかって肩で肩をどついてきます。ムムムム。クロめ!

「クロこそ甘えんぼなんだけどね。

サトみたいな弟ができたから

嬉しいんだよ」

チーが言うとクロはへへん、

とすましています。

サトもクロといると楽しい。

でもお兄ちゃんじゃないなあ。

どちらかというと、一緒に生まれた

兄弟たちという感じ。


そういえば、

サトのほんとのほんとの兄弟たち。

サトたちのママにゃんこ。

それぞれが飼い主さんに引き取られる時に

離れ離れになって会ってない。

皆。元気かしら。幸せかしら

ママ元気かしら


「…じゃあサトいくよ。」

チーとクロの体がふわり浮かびあがります。

サトはというと…

ジャンプして、木に登ってみますが

あれあれ?浮かばない。

こないだはもっとフワリと飛べたのに。


「今サトの魂は少し地上に引っ張られて

重くなってるから、

思い切り木の枝を蹴って。

サトがいつも見てる鳥みたいに。

羽ばたく感じで」

んー?んーんーむむむ。

チーの言う事はわかるのですが、

いざやるとなるとむむー?


「じれったいなーほらっ!」

どーん!

クロが後ろからどついてきます。

な!!!

何やるのクロのばか!

サトがとろとろしてるからじゃん!

ばかばか!

二匹取っくみあってると…


「…その辺にしとこうか。サトも

上手く飛べたようだし」

やれやれ気味のチーの言葉に気がつくと、

サトとクロは

取っくみあいながら宙に浮いていました。



「さあ、飛んでいくよ。

ずっとずっと上にいく。風に沿って

飛んでいけば、そのうち『道』に

繋がるから」


さあ、いよいよです。

サトのはじめての冒険。

長くて一瞬の、旅のはじまり。


《続きます》

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