第5話
サトがおろおろしていると、
チーが優しくどこか哀しそうに
微笑んだ気がしました。
「じゃあサト、一度ヒロたちの所へ
帰ろうか」
!!
チーの言葉にサトは目を輝かせます。
「サト、ヒロやお母さんやお父さんの
こと考えて」
「お目目つぶった方がいいよ」
サトはチーやクロの言うように
目をつぶりました。
そして、一生懸命、
ヒロや、お母さんや、お父さんの事を
考えます
目をつぶってるから真っ暗だけど、
その真っ黒なボードの上に
ヒロたちの顔が浮かぶように念じます
すると
「ひかりが、みえるでしょ」
クロが言います。
暗闇のなかに、光がみえます。
まるでさっき見た夜空に浮かぶ月の様に
「サト、その光に飛び込んで。
その先に、ヒロたちがいるから」
!!
そんな事いうものだから
サトは嬉しくなって
ヒロー!
夢中で飛び込みました。
するとどうでしょう
!!!
光に包まれて、サトは『その部屋』に
現れました。そして天井から地面へ、
ゆらりゆらり降りてきます。
この部屋は。
…おうちだ!
そしてこの部屋の中には
ヒロお!
そこにはヒロが座っていました。
お母さん、お父さんが座っていました。
戻ってきたのです!
そして部屋には小さい黄色いお家の形をした
箱と、沢山のサトの写真が
置いてありました。
サトのためのご飯や水も用意してありました。
サトはゴロゴロ喉をならして、
ヒロにすりすりします。
帰ってきたんだ!帰ってきたんだ!
サトは嬉しくて泣きそうになりました。
そのあと、いつもの様にご飯を食べます。
美味しい!
すっかり安心してお水を飲んでると
「そのご飯やお水が美味しいのは、
サトがヒロたちの心を受け取ったからだよ」
!!
その気配は。
振り向くとそこにはチーやクロがいました
「サト、今までだったらお皿のご飯は
サトが食べちゃったらなくなったよね。
だけど今みて。ご飯はいつまでも無くならない」
チーがいいます。またいつも
チーのいう事は難しくて
サトにはよくわかりません
「今までだったら、サトが来たら
ヒロも、お母さんもお父さんも皆サトに
話しかけてきたよね。でも、いま皆
サトのことも、僕らの事も気づいてない。
…見えてないんだよ」
よく、わからないけど
チーが何かとても辛いことを
サトに言ってるのはわかります。
「サト、その黄色いおうち。」
サトの後ろに見える、黄色いお家の形をした
小さな箱。
「その中には、サトのいれものだった
ものが入ってる。今のサトはいれものを
無くしちゃったんだ」
サトはじっと、黄色いお家を
見つめます
「だから、ヒロたちはサトが見えないの?」
…サトは呆然として呟きました。
「でもいいもん」
サトは力強く呟きました。
そして…ヒロの膝の上に、
サトお気に入りのひざ掛けが置いて
あったのを見つけると、
てててっ、と駆け寄りヒロの膝の上に
乗りました
「あったかいよ。いつもと
一緒だよ。それにさっきヒロ、
サトのこと撫でてくれたよ」
そう。それはあるのです。
見えないはずの、自分たちの気配を
受け止めてくれる奇跡の瞬間。
それは、チーもクロも知ってました。
「だからいいもん。
サトここにいるもん。
ご飯も美味しいもん。
チーもクロもあっちいって!」
サトは振り絞るようにいいました。
チーは無理もない。という風に。
クロはちょっと頭にきた感じで、
お母さんの肩の上にててっと乗りました。
「何だよサト。
何独り占めしようとしてるの。
そのご飯だって、ヒロはサトだけに
くれたんじゃないよ」
むむっ。
「じゃあクロも食べてみたら」
サトがむくれて言うと、
クロはてててっ、とご飯にかけより
「美味しいよ!」とふふん、とした顔で
いいました。
サトはむむむ、と更にむくれます。
「じゃあいいよ。クロもチーもサトと
一緒にここにいればいいよ。
今までも、サトは見えなかったけど
ずっとここにいたんでしょ?」
サトはお目目をぱちくりして言います。
するとチーがいいました。
「ダメだよ、サト。
僕らは永くここにはいられない」
サトはまた目をパチパチしました
「この地上はね、色んな生き物を包み込んで育んでくれるけど『いれもの』を無くした
僕らにはその力は強すぎて、ずっといたら消えてしまう」
またチーが難しいことを言います。
「そうなったら本当にヒロたちに会えなく
なっちゃうよ」
それはわかりました。大変!
「ねえサト、ボクとクロを信じてくれる?
まだ君はいれものを失ったばかりで
地上の影響をそこまで受けてない。
しばらくは君はここにいればいい。
でもね、そのあとボク達と旅に出る。
そうすれば、地上に捕まらない。
だけど、ヒロたちともまた会える。
…ヒロたちと心が繋がってれば必ず会える。
…信じてくれるかい?」
チーはまっすぐな瞳でサトに語りかけます。
吸い込まれそうな。さっき見た、
青い空のような瞳。
「チーを信じてサト」
クロが言います。
「いま、ボクとチーがここに来たのが
証拠だよ」
今しばらくだけ、君はヒロたちと
一緒においで
はっ、と気づいた時には。
チーもクロも、消えていました。
《続きます》
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