第4話

ああ…これが、お外なんだ。

いつも、ガラス越しでしか

見れなかった。

むかし、昔に自分も知ってた筈のお外。

浩がいつも行ってきますと出て行って、

ただいまと帰ってくるお外。

いつも鳥がチュンチュンしてるのを

ガラス越しに狙ってたものですが

「!!」

いますいます。

電信柱の電線に沢山止まっている

カラスたち。むむ!

サトはお尻をあげて

しっぽをフリフリして

とりゃー!と跳びかかります。

するとどうでしょう。

地面にいたサトはまるで飛ぶように

高い電線にいたカラスのもとへ。

カラスがばささ、と飛び立ってしまいます。


カラスにサトは見えていないのですが。

野生の勘で、何か感じたのかも

しれません。


サトは拍子抜けしました。

自分が空を飛ぶなど思っていな

かったから。


せっかくだからさっきまでカラスのいた

電線の上を歩きます。

本当は猫が歩こうものなら感電する

はずだけど‥そんな知識はサトにはありません。平気でスタスタと歩いていきます。


高い…気持ちいい!

いつもカーテンレールの上を

サトが歩いていたらお母さんが

かんかんに怒ったものですが

今はそれよりもっと高い!

果てしない広さ!

はてしない…果てしない、お外の世界。

サトはわくわくしてきました。


やがて、

…あの娘いるかな


いつもガラス越しに自分に会いに

きてくれた白い綺麗な猫の事を思い出します。


サトは電線を歩きながら、

いつも彼女が歩いてきた道を見下ろして

やがてふわっ、と道に降りたち

彼女のいた辺りを見回しますが、

彼女はいません。


他の所をお散歩してるのかしら


せっかくお外に出たのに。

サトはしょんぼりしました…

そして…あろうことか。

「!!!」

目の前に現れたのは、以前ガラス越しで

サトに喧嘩を売った、

あのドラ猫ではありませんか!

フーッ!

サトは大興奮!!

シッポをホウキのようにして、

身体中の毛を逆立てて

身構えます!

……が。あれっ。

ドラ猫はサトに気づかずすれ違って

いってしまいました。


「………」

サトは少し寂しくなってきました。

お外の世界は。

広くて。果てしなくて。


でも誰も、サトに構ってくれない。


…ヒロ。お父さん、お母さん…


恋しくなってきたその時

気づきました。

さっき電線のうえや道を随分

歩いたものだから

すっかり帰り道がわからなくなって

いることに。


やだ!!


そんなそんなやだやだやだ!


走り回って、

空を飛んで上からも見てみます。

でも焦ってるからか、

随分探し回りましたが全然わかりません


やだ!ヒロ!ヒロ!

やだお父さん!お母さん!!


にゃーん!にゃーん!にゃーん!

サトはわんわん鳴きつづけました


やがて。青かったお空と

さんさん輝いていた太陽が

赤く燃えるように輝いたと思えば

…やがて暗く。暗く。

真っ黒な空。

きらきらと輝く星空と

まんまるお月さんに変わって。


サトは泣き疲れてしまって、

電線の上で月の光を浴びながら

項垂れていました。


すると


「ほら言ったでしょ、

この子ヒロの匂いする」

「…ああ、ほんとだね」


はっ!とサトが顔をあげると

そこにいたのは


二匹の猫でした。

1匹はさっき、サトが外に出るきっかけに

なったあの黒猫です。


もう一匹は、不思議な。

クリーム色に、お顔や耳や手足は

チョコレート色。蒼い瞳。

サトは知る筈ありませんが

シャム猫というものです。


二匹ともじっとサトを見ています。

えっ、えっ。

サトが戸惑っていると


「君もヒロたちのとこに居たんだね」

シャム猫がいいます

「! なんで知ってるの?」


…余談ですが3匹は人間語が

話せてるわけではありません。

ネコ語というものでもありません。

にゃあ、という簡単な

鳴き声や仕草で言いたい事が

なんとなく伝わってくる。

そんな不思議な感じでした。


「クロもいったけど、君からヒロたちの

匂いがしたからね」

「ヒロたちを知ってるの?」


「知ってるよ。僕もチーもヒロ達の

とこにいたもん」

「!!」

サトは目をまん丸にしました。


二匹の猫は黒猫がクロで、

シャム猫がチーというようでした。

黒猫はサトと同じ年頃のようで

無邪気な元気者という感じですが、

チーは落ち着いたお兄さんという

感じです。


「僕らは一緒だねサト。

でもねサト。信じられないかも

知れないけど」

チーがいいました。


「君のいれものは、消えてしまったんだ。

僕らとおなじ」


サトはチーが何を言ってるか、

全くわかりませんでした


《続きます》

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