第2話

誰も口に出しません。

でも

浩(ヒロ)は毎日のように、

お母さんが神棚の榊を変えたり

お仏壇のご飯をあげるのにあわせて

サトにご飯をくれるのでした。


食べられないはずのご飯にお水。

…でもサトには美味しさが

伝わってくるのでした。


サトのお気に入りだった、

クマさん柄のひざ掛け。

いま浩のひざの上に乗ってます。


ひざ掛けはもともと浩のですが、

お手手でふみふみした時の手触りが

サトは大好きだったのでした。

いつも浩や

お母さんやお父さんは奪いあって、

勝ち取った誰かのひざに

そのひざ掛けを乗せて。

…今日は誰かな?

その誰かのひざの上で、

ひざ掛けと一緒に眠るのが

大好きだったのでした


だから今も


…今日はヒロのお膝だ


サトは膝に乗ると

いつもの様にふみふみして、

大きなお目めで浩の顔を

覗きこみます


…いつもどおりのご飯

いつもどおりのひざ掛け


いつもどおり。

…だよね。だからサトは安心するのだけど


やっぱり、…なんだか

浩の表情はかちんこちん。


にゃーん。


不安になって小さく鳴くと

浩が撫でて…ひざ掛けを撫でて…

くれます。

だからサトは安心してゴロゴロ

喉を鳴らすのでした



ふと。


それに気づいたのは、不安だったサトが

随分リラックスしてきていたからかも

しれません。


あれっ


サトのお目々がキョロキョロと

『それ』を追います

サトの耳がぴくぴく動きます


あれれ、ここ。


…いっぱいいる


お母さんがまたお仏壇にご飯をお供えします。…そしたらほら。


そっと何か


…ふわふわした、微かに白い影


それに浩がくれるサトのご飯にも。

…その気配。こちらは随分と小さくて


…何?!

それはサトのご飯なんだから

横取りするにゃん!


サトが睨むものだから『それ』はすたすたと

むこうへ歩いていって。

部屋の隅に座ったのがわかります


ふわふわした小さい、白いもの


その中にきらきらした2つのものが

見えます


…お目々


それは、サトとおんなじ

まんまるお目々


サトと同じ、にゃんこの瞳でした



《続きます》

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