一日目/午後
【笠井蓮/We Are The Massacre】1
うわーすごーい!反対車線にレンレンがいない!ここにいる!なんかこう、やばいね、すごいね……そんでもって暖かいね君、はいすきー、さらにすきー。
……そんな怒んないでよ、高校生だからうざいくらいが丁度いい年頃なんじゃないの? ウチの親すごいバカップルすぎてそういうの見る度胸焼けするんだけど、同時にあのバカップルよりも進んでいないよなあって。手とか繋いだりとか、そういうのしてみたかったけど全然してくれなかったから。
いつから……まあ、これはアレだよ、前借り後払いってやつ、借金的な借カップル……
いやね、結構ハードル高いかなって思ってたからクラスの前で言って正解だったよ。皆、確かに結構囃し立てて来るだけで良い奴らばっかなんだよ? だってレンレン誰とも喋んないから、何考えてるか分かんない奴だって思われてるし、結構先生とか心配してるしさ。まあ今は反抗期で僕にツンケンしてるけど、そうやって感情とかあった方が取っ付きやすいじゃん。松川とかめちゃくちゃ頑張れよって顔で見送ってくれたじゃん、がんば……何も頑張らなくて良いけど頑張ろうよ!
――何考えているか分からない、それで結構なんだけど
……というのは2割で、残り8割はお泊りしたいのと香に代わって仕返しすること? 僕らって一体しかないから何もわかんないと思ってるでしょ? 分かるんだよなあこれが……僕らってね、スマホとかノート使って会話してるから、勿論レンレンが何したかってのも書いてる。んではい、今日の昼休みだね、これ見てこれ「いやらしいことされた」って書いてますね、どういうことですかねこれは。ん?
……まあ、ということで、僕は引っ込み思案になっちゃった香の為に君に聞かなければならない。仕方ないね。それでどのくらい進展しちゃったわけなの? 教えてよお。
――お前、二重人格じゃないだろ。さっきから人格に対しての個性が際立ちすぎている
まあそこは便宜上ってやつだよ、こういうの説明が面倒だしさ……ええ、これ話すの? ……もう! 仕方ないなあ!
えっとねえ、とりあえず言っておきたいことは、一応僕には弟がいたんだよ、それで前の所ですぐに死んじゃった。ネグレクトってやつだね。僕はあんまり覚えてないけど、確か大人の人が助けてくれた時は餓死だったっけ。もう最後辺りお腹過ぎすぎてゴミ袋すら持てなかったけど、僕は僕なりに頑張ったと思うんだけどね。それで確か、今の及川ってところは僕の母親の姉夫婦に当たって……まあその後はよく分かんないっていうか覚えてないかな。もう幸せだから忘れちゃった。ひとまず香って子はその弟だね、いや、本当は香じゃなくて別の名前かもしれない。でも僕はその子の名前も「お前」ぐらいしか分かんなくてさ、名前が「オマエ」なわけないでしょ? 最後、お母さんが差し入れか何かでポテトチップス持ってきてくれた時、名前決めようよって言ったんだけど駄目だったな。だからもうちょっとちゃんとした名前が良いなあって、香にしてる。
便宜上、まあ便宜上だね、はっきり言えば結構怖いおままごとを昔からしてる感じなんだよ。名前も含めて、香には何にもしてやれなかったから、香には僕を使って遊んでもいいよなあって思ってる。香が生きていたらどんなことしていたかなとか、結構泣き声がすごかったから元気な子なんだろうなって思って、僕は一度香になって振る舞ったら……何かいつの間にかこうなっちゃったみたい。ああ、病院とかに行かせちゃ駄目だよ? 何かそれやばくない?ってちょっと自覚してるけど、この生活すごく幸せなんだから。
僕の中の香が生まれたのは、その今の家族に引き取ってすぐでさ。生まれた時、香は何をして何を言ったかも僕全然覚えていないんだけど……でも香は良い子だからって、変なことにはなってない。流石にご飯は一つしか出してくれないけどね、でもすごいんだよあのバカップル、僕の人格をちゃんと把握してくれる。いや、僕以上に分かってる……ちょっと気味悪いね。いやでも基本的に悪い人じゃないし、一応こう、夫婦ってより婦々だから、大歓迎だろうし。ウチのおばさん……ああ叔母のほうね、叔母さん若い頃姉さんに押し掛けて来たから多分大丈夫、いやむしろ恋人つくって来いってすっごくうるさい。もう恋愛至上主義のとこ、どこ行っても僕は苦労するよ……ってかそこまで話したらレンレンも。
――お前が、結局幸せかどうか答えから言うよ
大変だけどめちゃくちゃ幸せだね、叔母さん達怒るとすごく怖いけど優しいし、ご飯は美味しいし、それに大切な人も恋人候補もいる。
――そう、ただ悪いけど俺はお前のこと変な目で見るだろうから言わない
……うーん、分かった。変な目で見ない自信しかないけど、やめとく。僕はこういうことは齟齬とかないように教えたいんだけど、レンレンにはレンレンの事情があるからなしだね。ああでもさ、家に泊まるって言ったし、親御さんに連絡したんだよね? ワンさんだっけ?
――ウチの父親家空きすぎてて、秘書みたいな人が代わりに家にいるんだ
へえ、じゃあ追々レンレンの父親と話してみたいな。一度だけ始業式で見たことあるけど、黒髪のなんか綺麗で優しそうな人でしょ?
――やめて
なんでさ? それとレンレンってアルバイトしてるって聞いたけど何? どういうアルバイトとか、そういうの聞いてみたかったんだけど。
――それも駄目、絶対に関わらないで、無理に会うならこれ以上付き合えない
――あの人は、化物なんだ
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