童話 大きな鳥と小さな鳥

 ある野原に大きな鳥と小さな鳥がおりました。

 どちらもうまく野原で生きておりましたが、やがて困ったことが起きました。この冬、食料が付きそうなのです。

 大きな鳥たちも、小さな鳥たちも急いで会議を開きました。


「どうするどうする!」

 小さな鳥は言いました。

「どうしようもない。とにかく今ある分を分け合うしかないんだ」

 大きな鳥は言いました。

「それは困った。こんなのじゃ足りないよ!」

 小さな鳥たちは憤慨します。こうも付け加えました。

「それに、君たち大きな鳥は、僕たちよりたくさん食べるんだろう? それならもっと足りないさ」

 そうなのです。大きな鳥たちは、小さな鳥たちより数が多く、体も大きいので、たくさんの食料が必要です。

「それは仕方ない。体に応じて分ける食料の量を変えればいいのさ」

「でも、そんなことをしたら、みんな飢え死にだ!」

 みんなで話し合いを進めますが、なかなか話がまとまりません。

「じゃあ、こうしよう」

 大きな鳥の一羽が言いました。

「僕たちがもっと食料を取ってくる。これで文句はないだろう」

「でも、外は危険だね」

 別の大きな鳥が言います。

「しょうがない。小さい鳥たちは弱いんだ。僕たちが行くしかないだろう。ほんとは僕たちだって行きたくないさ」

 大きな鳥は次々に外に旅立っていきました。


 翌朝。大きな鳥たちは戻ってきました。

「うわーん! 仲間が人間に殺されたよ! やっぱり無理だ。これ以上の犠牲は出せないよ」

 すると、大きな鳥たちはこうも言いました。

「小さい鳥たち。『君らが弱いからいけないんだ』! いつも食料を持ってくるのは私たち。それは、君たち小さい鳥が自分で人間をよけてエサを取れないからなんだよ?」

 すると、小さい鳥たちも言い返します。

「何を言う! 私たちだって努力をしている。その結果取る量が君たちより少なくても、しょうがないじゃないか!」

「でも、結局量は少なくなるんだろう? 君たちがいくら努力をしていようが、たくさんエサを取らされる僕たちには、全く関係ない!」

 小さい鳥たちと大きな鳥たちは、争い始めました。


 当然。大きい鳥たちの方が勝ちますが、小さい鳥たちも必死です。この冬の食料がかかっているのです。

 ついにたくさんの犠牲が出ながら大きい鳥たちが勝ち、残ったわずかな小さい鳥たちは、別の場所へと旅立っていきました。

「ふう、これで人数分の食料が手に入った」

 すると、賢い一羽の大きな鳥が言いました。

「……これでよかったのかもしれない。なにせ、あの小さい鳥たちは、私たちの役に立たないのに、わざわざ私たちは食料を運んでいた。世の中平等だけが真実じゃない。自分が都合よく生きるためには役に立たないものを排除することも、きっと必要なんでしょう」

 悲しそうな顔をした大きな鳥たちは、その冬をしみじみと越しました。


 それからというもの、大きな鳥たちと小さな鳥たちが会うことは、ありませんでした。おしまい。

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