実験、真理、奈落

 未来永劫、この世のすべて。人はそれを『真理』と呼んで、ありとあらゆる技術を用いて探求してきた。


「ふう」

 テスタ・モロ。彼は若い冒険家である。

「そろそろ行くか」

 たくさんの道具をリュックに詰めて、家を出る。

 冒険家は、真理を追い求める。そして彼も例外ではない。彼が行く場所。

 この上の世界だ。

 どうやらこの世界は、大きな球体の面に位置しているらしく、北へ進めば南から戻ってきて、東へ進めば西から戻ってくるようにできている。しかし冒険家たちの疑問は尽きない。

 上や下に行けばどうなるのだろうか?

 もし上に行くと下から出てくるようであれば、もう行くところなどなくなる。真理は探究しつくされる。

 しかし、そんなことは無い。もっと世界があるはずなのだ。あの星空が浮かぶ世界、はたまた未知の地下世界が。

「では行ってきます」

 彼、テスタは、仲間と一緒に、上を目指すことにした。と言うのも正攻法ではない。

『上に行くために下を目指すのだ』。

「まずは、ここにある奈落の底へと飛び込む。そこから一気に下まで掘り下げて、この世界の裏側まで進む。この世界は球体だけど、他にも球体の世界が浮かんでいるかもしれないからな……。もしかしたら、人だっているかもしれないぞ! ワクワクしてきたな!」

 ようするに、奈落の底まで行ったら、裏側まで掘り進める。その後に、出てきた地点から穴に飛び降りて、反動で上に出ようというのだ。もちろん落下傘やらは用意しているし、上に飛んでいくのを補助する機械もある。世界に出現していた巨大な穴の中は末に開拓されつくされていて、下の世界の完全な開拓はもう少しなのだ。

 幸いなことに、穴をあけて出てくる地点は、海の底ではなく地面がある。

「よし、行くぞ!」

 彼は、穴を掘り始めた。今こそ、『上』を目指すときだ。


 穴を掘るのにたくさんの時間がかかった。ついに、あの空の彼方へと自分は吹っ飛んでいけるのだ。


 ビュオオオオオオオオ!

 風が体をよけていく。穴に落ちていく彼が見たものとは……!



(一種の思考実験的な何かです。続きません)

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