青野瀬樹斗さんのリクエスト(二次創作)
本人のリクエストで、二次創作をさせていただきます!
では、どうぞ。
彼女は、
今日も、彼女は一人で町をふらつく。いつの間にか真夜中になっていた。
「あー。……ここらかな?」
彼女は、すぐさま顔の下半分を覆っているマスク型の魔動器を発動して、戦闘用に服に着替える。瞬く間に、彼女の服が、地味なパーカーから真っ赤なスウェットへと変わった。一七の年にしては、少々大人びた雰囲気がまとわりつく彼女は、その鋭い視線を森の中へと向ける。
ポータル。
人類の天敵である、唖喰が出現する
最近、世界中の幹部たちが集まって会議が開かれた。『ポータルを消滅させることができない』。普通、ポータルは魔導の攻撃によって、塞ぎ、破壊することができるものだ。しかし、この飛騨山脈のなかに一週間以上とどまっているポータルは、ありとあらゆる攻撃を受けても、全く閉じることがない。
どうなっているのか、現在調査が進められているが、この一週間の間、溢れだしてくる唖喰の対応に追われるため、実際のところは、その対応で精いっぱいだ。
「どーすっかなー……?」
さも、めんどくさそうに彼女は言うが、その瞳はポータルからポトリポトリと落ちてくる唖喰、ラビイヤーを睨みつけている。
「やりますか……」
蔵木は、頭をぼりぼりと掻いて、マスクを外す。
途端に、彼女の後方に、魔法陣が出現する。そこから出てきたのは。
二丁の刃先が付いたマスケットのような銃。いわゆる『銃剣』である。
そう、これが彼女の武装だ。
そもそも、日本には、最高序列の一位と五位がいるのに、なぜ彼女が採用されたか。答えは簡単。
このポータルに近づくと発声する特殊な力場のせいである。
具体的には、力場に近づいていくと、過去のトラウマが再現される。それも並外れた現実味を帯びて。精神が乗っ取られるのだ。いくら最高序列に名前を並べる魔導士と言えど、精神面を現場でズタズタにされるわけにはいかない。少しでも行動が遅れれば即座に『喰われる』。
この少女、蔵木美衣菜は、既に『精神が壊れている』。通常では考えられないほどの重度の精神障害。それゆえ、彼女は普通の生活は無理だとまで医師に宣告されてきた。しかし、魔力は持っていた。
対策本部はそれを見逃さなかった。
彼女の精神の異常性をコントロールすることができるようになれば、精神面の状態に左右される魔導を、強く操れるようになれるのではないか、という仮説が立てられたのだ。
どちらにしろ、生まれたときから普通の生活を送れるようになることなど到底できない。本部は、蔵木の良心から彼女を引き取り、懸命に国の最先端の技術を持って、なんとか生活ができるレベルにまで育てたのだ。
マスクもその一種。彼女はマスクで顔を覆うことによって、精神面でのつかの間の安定を確保する。しかしそれが外れると。
「はは……。ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
狂ったような、いや狂った笑い声をあげながら、彼女は二丁の銃剣を、湧き出てくる唖喰に向かって投げつけ始める。すぐさま、背中に浮かんだ巨大な魔法陣から、銃剣が出てくる。
そして、それを振り返りざまに、一発撃つ。そしてそれを捨てる。
また、後ろから取り出す。前に撃つ。捨てる。
彼女は、迫ってくる唖喰達に向かって、踊りながらそれを繰り返す。
どんな精神状況下でも、戦える魔導少女。それが蔵木美衣菜。
「あっハハハハハあああはああああはッ!」
声にならない笑い声をあげながら、今度はひたすら泣いて、銃を乱射する。
この銃剣はマスケット型なので、一度に射出する魔導の弾は一発である。しかし、彼女は、後ろから次々と銃を取り出して、そして時には刃で切り裂いて。
踊る。踊る。振り向きざまに、唖喰を蹴り飛ばして。また道化師のように踊る。
普通精神状態を安定させ冷静になることこそが、戦闘での基本である。しかし、彼女はそれを膨大な魔力量によって逸脱している。
狂っているから。
くるくるくるくる。と、マスケットを手の上で転がして、続けてポータルに弾を発射する。
バアアアアアアッ!
ポータルは破壊された。
「ハハッ。面白くないの!」
彼女は、これからも狂ったままなのだろうか。
持ち彼女が、並木ゆずにおける司のような人物に会っていたら。
この未来は変わったのだろうか。
「報告報告ッ!あはははは……」
彼女は、忘れずに大きなマスクをつける。
「ふぅ……」
途端に真顔になった彼女は、本部へと連絡し、飛騨山脈の森を後にした。
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