【4/追憶-board-】
「さあ! 遠慮せずに食べて」
ティーシャと名乗った赤髪の少女は満面の笑みでそう言った。
彼女たちがいるのは豪奢な部屋だった。
高い天井にはきらびやかなシャンデリア。一目見ただけで、高級品であることがうかがえる調度品。ティーシャと金髪の少女は美しい彫刻の施されたテーブルを挟んで座っている。
二人の前にはそれぞれ、スープ、パフォエ(カエヤバの伝統的な肉料理)、ソテー、固いパン、ナイフとフォーク、スプーンが置かれていた。
ティーシャの対面に座る金髪の少女は、俯いたまま「でも……」と呟いた。
「遠慮しないで。ティーシャはいつも一人でご飯を食べているから寂しいの。誰かと一緒にご飯を食べたことなんて数えるほどしかないから、こういう風に誰かと一緒にご飯を食べるだけでとても嬉しいのよ」
ティーシャの優しげな声に戸惑いを覚えながら金髪の少女は、テーブルの上のスープをスプーンですくって恐る恐る口元へ運んだ。
スープの味を感じた瞬間、少女の内側から形容しがたい感情が溢れ、目尻から涙が溢れた。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
ティーシャはおどろいた様子で立ち上がり少女のもとに駆け寄った。少女の涙はとどめなく溢れ続け、少女のなめらかな肌を静かに滑り落ちていった。
金髪の少女は自分がこんな強い感情に襲われたのは久しぶりだと気づいた。
「……だ、大丈夫……。その、とても……美味しかったから……」
これが、金髪の少女が初めて口にした人間の食べ物だった。
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