【2/ろうそくと、一通の手紙】

  ろうそく一本分の炎のみが揺らめき、部屋の中を少しだけ照らしている、そんな部屋の中央にある椅子にフレイは腰掛けていた。

 フレイの腰掛けている椅子の前にある机には、一枚の紙と羽ペンが置いてあり、彼は時折羽ペンを持って紙に何かを記そうとし、思いとどまって何かを思案するように前髪をいじる、という動作を繰り返していた。

 彼のいる部屋の壁には本がぎっしりと詰まっていて、その中の一冊を取り出し、ぱらぱらと頁を捲り、また別の本を取り出し頁をめくったりしていた。

 何か、迷っているようなそぶりであった。

 しばらくその動作を繰り返していたが、やがて意を決したように羽根ペンを取り、今度は迷いなく文字を紡ぎ出す。

 形の整った文字が白紙を淀みなく埋めていった。

 そしてそれを長い指で半分に折ると、丁寧に封筒に入れて蝋を垂らし封をし、宛名を書いた。それから箪笥の中から、大きな黒いマントといくつかの衣服を取り出し、部屋の隅にあるトランクに詰めた。

 そして軽く息を吹きかけろうそくを消し、トランクを手に部屋を出た。

 部屋の中にはまだ半分以上蝋が残っているろうそくと、一通の手紙のみが残されていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る