第34話 一二火攻編1

○超訳 12-1


孫子は言う。

前編までを原則論とし、

以下より特に留意すべき

二種の策略について述べる。


第一は、火計。

火計は五種に分類される。


1:人を燃やす。

2:装備や兵器を燃やす。

3:糧秣を燃やす。

4:駐屯地を焼き払う。

5:進軍ルートを焼き落とす。



では、いかに火計を為すべきか。

以下の原則を踏まえ、

以下の準備を為すように。


まずはタイミングと、日時。

乾燥して、風の良く吹く日が良い。

特に月が箕、壁、翼、軫の

各宿を通過するタイミングでは、

風が起こりやすくなっている。


さて、では火をつけよう。

放火には、五つの原則がある。


1:内より放火し、外部に脱出せよ。

2:敵の対応を確認せよ。

  撹乱として機能せぬのであれば、

  攻め込んではならぬ。

3:外からの放火は、

  こちらのタイミングで為せば良い。

4:風下に火は回る。

  間違っても風下から

  攻め立てぬように。

5:昼間に風が始終吹くときには、

  夜には止むことが多い。

  このような日の夜の火計は

  効果が薄い。


これら原則に従い、

火計の検討をせよ。


火計はあからさまに敵を撹乱する。

一方で、水系は攻撃者に

継続的なサポートをもたらす。


水計は敵の進軍、補給を寸断は出来るが、

敵そのものを倒すのは難しい。


さて、戦争に勝利しておきながら、

論功行賞も為さず、だらだらと

戦闘行為に耽るようなありさまは

「費留」と呼ばれる。無駄遣いにより、

国の寿命を縮める凶行と言える。


君主は、以下をよく慮らねばならぬ。


メリットなくして動くな。

利益無かれば兵を動かすな。

危機にあらざれば戦うな。


君主が怒りにまかせて開戦するだとか、

将が恨みを晴らすために出撃するとか、

全くもって問題外である。


メリットあらば動き、

なかりせば動かぬ。

怒りが喜びに、

憤怒が悦楽に変わることはあれど、

亡国も、死者も蘇ることはない。


名君は感情によって動くのを慎み、

良将は感情によって動くことを自戒せよ。

これが国に安寧をもたらす作法である。



○明暗テンプレ 12-1


戦争に勝利したら速やかに兵を引き、論功行賞を為す。 12-1-1

メリットや利益を見出し、初めて動く。 12-1-2

危機に陥らないのであれば戦わない。 12-1-3

怒りや恨みでは動かない。 12-1-4

軽挙によって出る損害が取り返しのつかないものであると弁えている。 12-1-5

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