第31話 一一九地編3

○超訳 11-3


兵士が余計な財貨を持たぬのは、

財貨を嫌っているから、ではない。

命を惜しまず投げ出すのは、

長生きを嫌うから、ではない。


戦闘の指令が出たとき、

坐すものは涙で襟を濡らし、

横たわる者の涙は顎を伝う。

覚悟を決めた彼らから逃げ場をなくせば、

彼らは比類なき勇士となろう。


このため、戦巧者は率然と喩えられよう。

率然とはまた、常山の蛇とも呼ばれる。

頭を攻撃すれば尾が、

尾を攻撃すれば頭が、

半ばを攻撃すれば両方が、

攻撃者に襲い掛かる。


敢えて問おう。

「兵を率然と操ることは可能か?」

可能である。


例えば、敵国のものと同じ船に乗ったとて、

ひとたび嵐に遭えば、

沈没せぬよう助け合おう。


逆に、戦車に馬が繋がれたとて、

車輪が轍にハマれば動けるまい。


兵士らを奮い立たせ、

一致団結させるのは、将の企図による。

勇者も臆病者も等しく果敢に戦うのは、

環境を設えるからである。


戦上手が軍を自らの手足のように

操れるのは、元より兵らを

そうせざるを得ないような状況に

追い込んでいるためである。



○明暗テンプレ 11-3


兵は追い詰められたときに全力を発揮すると知る。 11-3-1

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