第10話 〇四軍形編1

○超訳 4-1


孫子は言う。

古の戦争功者は、付け入る隙を与えぬ事を

最優先事項とする。

その上で、敵の隙を探るのである。

負けぬだけの準備は我々にできるが、

勝つための準備は敵の隙を待つ以外にない。

効率を考えれば、先人の姿勢は、

非常に無駄がない。


故に、負けぬだけの態勢を組み、

勝ち筋を探る、は、

常に勝利のセオリーである。


負けぬための行いを守りといい、

勝つための行いを攻めという。

守れば隙は小さくなり、

攻めれば隙は大きくなる。


このため、守りの上手い者は、

こちらの事情を巧みに伏せる。

また攻めの上手い者は、

相手の事情をつぶさに見抜き、

その隙間を的確につく。

その両輪を兼ね備えれば、

こちらの損害を最小限とし、

勝利することが叶うのである。


大いなる戦での快勝など何ほどか。

天下に鳴り響く勝利など何ほどか。


埃を払っても怪力と称えられはすまい。

太陽や月が見えても慧眼とは呼ばれまい。

雷の音を聞いても耳聡いとは言われまい。


だが、勝利とは

かくの如くあるべきである。


善戰者、勝於易勝者也。

 善く戦う者、

 勝ち易きにて勝つ者なり。


故にいにしえより、

真の軍巧者に知名、勇名はない。


彼の戦いは誤ることがない。

そこに既にある敗者を

打ち払うだけだからである。

盤石の体制をもって、

敵のほつれを見逃さぬからである。



戦場に立ち、勝利するものは、

勝ち筋を立ててから戦いに挑む。

戦場に立ち、敗北するものは、

勝ち筋を戦場で見出そうとする。



○明暗テンプレ 4-1


攻撃態勢の確保よりも、防御の隙潰しを優先。 4-1-1

外部に作戦行動の徴候を漏らさぬよう謀る。 4-1-2

圧倒的優位の確保の上、勝つべきに勝つ。 4-1-3

知名、勇名を求めない。楽勝となるべく情勢を整えるため。 4-1-4

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