第2話 姫川理沙は、噂以上の化け物だった

『龍一視点』


 学校のグランド。


 春の香りがこうをかすめる。


 満開の桜の花。


 青空を背景にしてピンク色がより鮮明に感じられた。


 映画のワンシーンにでもしたくなるほど、キレイな風景だ。


「体力測定とか。

 マジで勘弁してほしいんだけど」


「ほんとほんと、汗だくになっちゃうって~」


 女の子たちが口々に言いながら、第2体育館の方へと歩いていく姿をグランドから俺は眺めていた。


 黒スパッツに包まれた、ぷっくりとしたお尻。


 そこからすらっと伸びる健康的な脚がたまらない。


 少し伸びをする。


 深呼吸すると思春期の女子、独自の匂いがして何となく元気になる。


 でも彼女たちの言う通りだ。


 体力測定の主な種目と言えば『短距離走』に『走り幅跳び』や『20mシャトルラン』など、汗を掻く測定が非常に多いんだよな。


 あとは学校によって『反復横跳び』に『肺活量測定』や『握力測定』などもあるとか。


 そんなことを考えていると、第1体育館の方からサンドバッグを叩く音が響いてきた。


 気になって、鉄格子のついた小窓からなかをこっそりと覗き込むと、お嬢様育ちの品行方正で有名な姫川ひめかわ理沙りさがサンドバッグを乱打らんだしていたのだ。


 ヒトの顔と名前を覚えるのは苦手な俺でも、知っているくらい彼女は有名人だ。


 ひったくり犯を捕まえて、警察から感謝状をもらったことがあるとか?


 ゴミ拾いなどのボランティア活動をしているとか?


 とにかく噂がたえない美少女だ。


 体操服姿もめちゃくちゃカワイイな。


  そこいらのアイドルが平凡に思えるくらいの可愛らしさだ。


 金色の艶のある綺麗なロングヘアは、紅の紐リボンでツーサイドアップしていて、いつものストレートより、2割増しでカワイイな。


「男も女も軟弱な奴らばかりで、全然張り合いがないわ」


 その姿は、凛としていて格好良くて、動きのたびに揺れるおっぱいがちょっぴりエッチで、格闘技に疎い俺でも見とれてしまうくらい洗練された動きだった。


「イライラするわねえ」


 クマすら一撃で殺すような凄まじい拳が振るわれるたびに吊るしている金属製の鎖はきしみ、サンドバッグが大きく揺れる。


「思わず私がときめいちゃうくらい『野性味溢れる強い男の人』はいないのかしら」


 さらに姫川さんがトドメとばかりに、ボーダーのハイニーソに包まれた脚で回し蹴りを放った瞬間。


 鎖はちぎれ、サンドバッグが宙に投げ出され、爆発した。


 サンドバッグに爆弾でも仕掛けられていたんじゃないかと思うぐらい跡形もなく吹っ飛んだのだ。


「やっぱり加減で難しいわよね。

 ちょっと、気を抜くとすぐに使い物にならなくなってしまいますもの」


 だが当の姫川さんは日常茶飯事とばかりに、軽くため息をつくだけだった。


「それにしても今日は、暑いわね。

 まだ4月だというのに」


 ひたいや首筋などに浮かんだ汗をハンドタオルで拭く姿は色っぽくて、鼻息が荒くなってしまい。


「……きゃあっ!?

 へ、変態!? 覗き魔。変質者。

 そこを動くんじゃないわよ」


 どうやら俺が覗いていたことに気が付いてみたいだな。


 その瞬間。


 俺のなかの理性は消し飛んだ。


 極上のおっぱいを目にして自分を押さえることができず。


 鉄格子と小窓をぶち壊し。


「う、嘘でしょう」


 無理やりカラダをネジ込み体育館に侵入すると、姫川さんに襲いかかった。


「いやぁっ!?

 ちょっと、ヤメてぇ……そ、そこは……ダメぇええっ。

 ふぁあんぁぁあっ……んぅ……み、見ないでぇええっ、変態」


【強引に……グイグイ……迫られるの……イイ……凄くイイわ……】


 体操服がめくれあがり、包帯のような真っ白な布が見え。


 邪魔だなと思い。


 それをむしり取ってしまう。


 柔らかな脂質を溜め込んだ重量感溢れるオッパイがあらわになる。


「この私が……くぅ……はぁ……んんぅ……同年代の男子を相手にぃいぃ……後れを取るなんて……くはぁ……はははぁ……」


【無理やりさらしで締めつけられていて苦しかったの。

 助けてくれて、ありがとうございます】


 いまだに『童貞』だけど。


 おっぱいにかける『情熱』だけは、誰にも負けない。


 だからこそ、どのように触れば、おっぱいが喜ぶのかも熟知している。


 ダテに小さい頃からおっぱいを触りまくってきたわけではない。


【この触り方……昔に……どこかで……とても、とても……懐かしい……幼いころ……】


 さらにおっぱいの声を聞くことだってできるのさあ。


 しかし今、聞こえた声は断片的で、ノイズが激しくて、うまく聞き取ることができなかった。


「あ、あまり調子に乗ってるんじゃないわよ、変態」


 おっぱいを揉む手が緩んだ瞬間。


 姫川さんの蹴りが、俺の股間に炸裂した。


 あまりの痛さに言葉がでない。


「今、授業中ですよ。こんなところでいったい何をやってるんですか。

 まさか、いかがわしいことではないですよね」


 インスタントカメラを首から下げた緑髪の女子生徒が問い質してきた。


 彼女の名前は井上いのうえ あや


 写真コンクールで賞も撮ったことがあるほどの腕前だ。


「に、逃げるわよ」


「えっ!?」


「早く!?」


 姫川さんを俺の右手首を掴むと物凄いスピードで走りだした。


  手を握るという行為は本来、とてもフレンドリーなもののはずだ。


 女の子と手を握り合うなんて、少なく見積もっても『友達以上』の友好的な関係性があってしかるべきだろう。


 実際に彼女がどう思っているかは、分からないけど――――女の子の手って柔らかくて、プニプニして気持ちいいな。

 

「ちょっと待ちなさいよ」


 背後から井上さんの叫び声が聞こえてきたが、姫川さんは止まる気配は微塵も感じられなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る