No stop
『スナークハント』事件から一週間、美洋はジキルに連れられて大食いチャレンジメニュー制覇をさせられていた。
本日は超ビックお好み焼き30分以内完食で食事代無料。現在1時間経過、そして半分程食べ終わったところで美洋の手が止まっていた。
「美洋、食べるのをやめない!」
「明らかに僕の胃の容量から考えて不可能な量だよこれは」
そうは言うものの、美洋はお好み焼きを小さく切り分けて食べる。お店の人は食べれない分は持ち帰ってもいいと言ってはくれているのでゆっくりと処理していた。
「あれから、マッドティーパーティーについての情報は何か入ったかい?」
「ううん、真希奈のアカウントも何も呟いてはいないよ。これで終わりとかだったりするのかな?」
それに水を飲むと一息ついた美洋は言う。
「終わるわけがない。いや、終わらせない」
美洋が提出した情報で、明らかに脅迫めいた事をした人々は警察に逮捕されていく。それでもなお『帽子屋さん』アプリ自体に問題があったわけではないとそれは使われ続けていた。気分転換に見たテレビにはやはり、リーシャとピノッキオが映っていた。今回の事件について簡単に語るリーシャ、されど美洋との約束でワンダーランドの事もマッドティーパーティーについても何も話さない。
そんな彼女へのラブコールが色んなところから出ていると言われ、司会の男はリーシャにこの質問を聞いた。
「リーシャさんは付き合っている人はいるんですか?」
それには当然リーシャは答える。
「いませんよ! でも気になる人はいるかな!」
カメラ目線でそういうリーシャに反応したのはジキル、テレビをハッキングして消す。それには店内の人々は驚くがすぐに野球中継にかわり事無きを得た。
「絶対、リーシャ・ユビキタスの気になっている人は美洋の事だよ! あの女狐! ロボットと宜しくやっていればいいんだっ!」
いくら食べ続けても終わりそうにないお好み焼きを食べながら美洋はふと東雲亮とリーシャの事を考えていた。
彼らは何故、無関係の自分にあんなに親身になってくれていたのか、あの行為に何の意味があるのか?
考えても分からない事が世の中には多い。
「リーシャ・ユビキタスか」
その美洋の呟きをジキルが聞き逃すハズはなかった。もうそれはそれは恨めしそうな顔をして「やっぱしぃー!」と叫ぶ。
そしてジキルはヘラでお好み焼きを大きく切り分けるとそれを美洋に向けてこう言った。
「あーん!」
「そんなに食べられないから」
それに尚ヘソを曲げるジキル。美洋はさすがにもう食べられないとお店の人に持ち帰り用の入れ物を貰う。
帰り支度をしている美洋達、彼らの知らないところで再びSNSより新しい『スナークハント』が生まれる。それらはまた誰かを裁き、晒し、曲がってしまった正義を掲げる。いくら潰しても第二、第三の『マッドハッター』が現れるのである。
もうこの事件に関して誰も触れる事もなくなり、そして気にする事もなくなっていったが、アンダーグラウンドでは次の投票が容易され拡散されていた。
『リーシャ・ユビキタスを裁きますか? 裁きませんか?』
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