宮内浩 春 14
中谷勇次。
それが入学式に上級生と喧嘩をし、全身濡れの状態で町を歩いていたクラスメイトの名前だった。
彼は町では有名なチンピラで、以前に赤いスポーツカーを見つけては喧嘩を売っていた。そして、その運転手を片づけると車体にスプレーで「中谷勇次 参上」とラクガキをして回ったとか。
赤いスポーツカーにどんな恨みがあるのか想像も出来ないけれど、流石にラクガキのくだりは面白おかしく脚色されているような気がした。
ひとまず出鱈目な同級生であることは間違いなかった。
同じクラスの男子数名で中谷勇次の話をしていると、話を聞いていたクラスメイトの守田裕(ひろし)が「昨日のことは俺、詳しく知ってるぜ」と言った。
停学を告げられた中谷勇次は帰宅途中、新たな不良五名に絡まれて人目のない川辺に誘われた。
五人に囲われた際に、一人の不良にバッグを奪われて川に放り込まれた。勇次は五人をバッグと同じように川へ投げ捨てて行き、バッグを回収して帰った、らしい。
やはり脚色が入っている気もしたが、守田は少しズレた銀縁眼鏡を指で直して以下のように話をまとめた。
「あいつの喧嘩はいつも話として面白くないんだよ。ハラハラドキドキって言う観客を楽しませるエンターテイメント性がない」
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