レイジの捜索

「レイジ~!! レイジィ~!!」

「お~いレイジくぅ~ん」


 話を聞こうと探し始めると居ないもので――

 別荘に戻ってきた俺達四人は居残り組にも話を聞かせた。レイジに話を聞きたかった俺はすぐに別荘の中を探し始めたのだが姿を見つけられず、現在みんなに手伝ってもらってレイジを探してる最中なのだ。


「いたか?」

「ぜんぜん見当たらないよぉ」

「どこかに行っちゃったんじゃないの?」

「いや、それは無いと思う」


 何処かに行ってしまった。

 というのもあり得る話ではあるのだけど、少なからずレイジはこの辺りからは出て行ける事は無いと思う。



――それは結界があるから。


 日暮さんのお父さんの言っていた結界の話。今も続いているならばレイジがその影響下にあると考えていいだろう。そして外から入ってこれないというなら、同じように中からも外に出られないに違いない。


 そして俺の体がナゼこんなに重く感じるのかもだいたい想像がついた。同じような能力を持ったものが敷地に入ったときに、そのチカラを使いづらくするため。

これは想像の域を越えない考えなのだけど。


――そう考えると現在の状況などのつじつまが合う。ただ伊織にその影響がないというのが少しわからない事なんだけど。レイジに聞けばそれも分かるかもしれない。


 この屋敷にあったあの石でできたモノは、たぶん結界を張ったときの目印にしていたモノだろう。

 元々はほこらか何かでまつられていたはずのモノ。理由は分からないけど、それがこの庭にある。

 いや、もしかするとこの別荘として使われている建物自体がそのものなのかも。


――後でインターネットで調べてみよう。昔のこの辺の写真か何かを見てみればなにか写ってるかもしれない。


 屋敷の中を探してもいないとなると、残っているのは浜辺にまで続く庭だけ。


「伊織、一緒に来てくれ!!」

「え!? あ、うん!!」


――何かあったときに二人ならば対応できることもあるだろうし、もしも危険な事に巻き込まれるようなら、カレン達では申し訳が無いし、責任も取れない。それにせっかくの楽しい夏休みを台無しにするようなことはしたくない。

だから俺はとっさに考えをめぐらした結果が、伊織を呼ぶという行為に繋がった。

なるべく害が及ばないようにはするけど、伊織なら万が一の事が合っても兄妹

だし俺が怒られるだけで済むだろうし。何より母さんが伊織に憑いてるし安心するし……



 二人で並んで浜辺までの道を歩いて行く。

 ちょうど伊織が見つけた石のかたまりがあった近くまで来た時――


「お、お義兄ちゃん!! あれ!!」

「どこ? あ!! あんなところに!!」


 伊織が少しだけ上を向いて指をさしている。


 その先には波で削られたような荒々しい岩肌を見せているその先に森のような林のような…。木々が翠色に輝く葉を目いっぱイに広げて、それ以上は削られまいとしているような、何かを守る様な佇まいでそびえている。

 その根元をすーっと移動していく白い影。


「レイジ!!」


「お義兄ちゃん、あれって神社……かな?」


 レイジの移動する先にうっすらと建物らしきものも見えていた。


――赤いモノ。鳥居?

いや、そうだとするならば、アレはたぶん……


「いや、アレは祠じゃないかな」

「え? じゃぁ結界の一部って事?」

『そうねぇ。おそらくあの祠の中にあったものがそこに落ちてたんじゃないかしら』


 いきなり現れたも追う一人の肉親の声に二人でビックリする。


「か、母さん!?」

「お義母かあさん!?」


 こちらを向いて微笑んでいる。


『ほら、レイジクンが待ってるわよ。行っておいで』



 触れられることは無いのだけれど、確かに後ろに廻った母さんから背中を押されたような感じがした。


『これ……忘れずに持って行ってあげてね』


「これ?」


 いつの間にか目の前に、あの石でできた何かが置いてあった。


『それは本来、あそこになければいけないもののはずなの。あ、でもレイジクンが探してるモノはそれじゃないと思うわ』


 それだけ言うとまたスーッと消えて行ってしまった。


「あ!? また消えた!! まったく!! 肝心な事を言ってくれないんだな!!」

「お義兄ちゃん。たぶんお義母さんは自分たちで見て考えろって言いたいんじゃないかなぁ?」

「どうかな? 今の母さんの性格が良くわかんないけど、あれは絶対そんな事考えてなかった顔だぞ」


 伊織は「そうかなぁ……」とか「でもなぁ……」とかブツブツといっているけど、今頃伊織の中でまたペロッと舌を出してるに違いない。



――行ってみるか……


 伊織と顔を見合わせる。

 同じ考えに至っているようだ。


 小さくうなずいてレイジの向かっている所へ歩き出す。伊織と共にまずはあの樹の根元まで……






※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


実際に祠って一杯あるんですよ。探してみてください。もしかしたら自分が知っている、見ているモノが祠であるのかもしれません。そしてそれはどういう意味を持って建てられたのかを知る。

もう一度地元を見つめなおすきっかけになるかもしれませんよ?


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