結界

離れてまだ数日しかたっていない街に戻るため向かって車は走っている。


 乗っているのは俺と伊織、相馬さんと日暮さん。もちろん運転は市川姉妹のお母さん。お願いしたらあっさりと引き受けてくれた。今日はカレン達は残って宿題をかたずけるらしい。俺の学校よりも量が出ていて少しでもやっておかないと終わりそうにないとボヤいていた。


 日暮家はあの演舞があった事さえ忘れてしまうくらい静まり返っていた。

 何でも演舞が有る年はいつもこのような状態になるらしい。この時に全力を上げるため、その後は脱力してしまうのだという。


 それでも日暮家のお父さんに話を聞く事が出来た。


「いらっしゃい。君たちなら大歓迎だよ」


 そう言って迎えてくれた日暮さんのお父さんは、数日前とは比べ物にならないくらいなんというか……何もできないでいる感が凄かった。通された居間で座った俺が気になった事……一番目を引いたのが、日暮父の綺麗に整えられていた顔が今は凄くヒゲが伸びていた事だろうか。

 そんなお父さんの姿に日暮さんも少し恥ずかしそうにして俯いてしまったままだ。


「突然すいません」

「ああ、構わんよ。で、綾乃は楽しんでるか?」

「え!? まぁ楽しいよ」

「そうか、それは良かったな」

「う、うん」


 今度は顔を赤くして日暮さんが恥ずかしがっていある。

――あ~、これはこのままだと日暮さんが暴発しそうだなぁ……


 そう感じた俺は次に日暮さんがクチを開く前に話を始めることにした。


「あの!! それでお話していた件ですが、俺達が聞いても大丈夫そうですかね?」

「ッ!?」


――見事成功したみたいで、開きかけクチがだんだんと閉じていってむにむにしている。


「お!? おお、そ、そうだったね。しかしこの前もはなしたけど、そんな大した話ではないんだよ? それをまた聞きたいのかい?」

「ええ。しっかりと聞きたいと思いまして」

「今度は?」

「あ!! いえ!! もう一度聞いて頭に入れて自由課題にでも提出しようかと……」

「小学生か!!」


 俺の言った事にすぐに反応したのは相馬さんだった。

――はい!! そこツッコミありがとう!! 自分でもそう思いました。


 ちょうどその時日暮さんのお母さんがお茶を持ってきてくれた。

 もちろん伊織がそのお手伝いをして、最後に自分の分を目の前に置き座り直したとき、お父さんは静かに話し出した。


「あ~、聞いてきた話をそのまま話すけどいいかい? まぁこの辺の伝承みたいなものだと思ってくれていい」

「はい」


 それは俺達が考えていた事よりももっと大きい事態になりそうな話だった。


今から何年も前――

 本当にずっと昔だけど、この辺りにあった一つの村に一人の女の子が生まれた。そのコはある能力を持っていたそうだ。そう……君たち兄弟みたいなチカラがあったと言われてる。村はその子の事をみ嫌うようになってしまう。なぜか……そう、人が亡くなった後にその人についてあれこれ語り始めたから。

 それでもその子を守ろうとする村の人たちもいた。

 やがてその村は分裂した。

 信じる人と嫌っている人に。

 信じる人達は彼女の言う事の通りに動いた。するとその村の方だけが潤っていくことになった。それが妬ましくなった嫌ってる村の方々は、

 その子を追い出そうとしたりして更に険悪になって行った。


 彼女を守ろうとしてる人々は彼女のためにと、村に結界を張ってそこに入って来る者を警戒するようになる。それからは目的を忘れたように争い合いその結界を守ることが主になって行ったんだとさ。


 演舞かい? あれはもともと彼女を楽しませようと村の人々が踊っていたのが起源らしいけど、途中から彼女を崇拝する踊りに、捧げるための踊りに中身が変わったと言われている。

 ん? その結界? ソレは分からんなぁ……範囲は確か…隣の町の中まで広がってたらしいけど……その頃の遺跡みたいなのが発見されてるらしいよ。後で案内しようか?


「それで……その女の子はどうなったんですか?」

「うむ。聞いていた話だと、確か結婚して幸せに晩年は暮らしたみたいだ。亡くなってからも村の人はその子の事を大切に守り抜くために……いやほら、その骨とかにもそういう力が残ってると思うやからがいるから、そういうやつから守るために確か社を造ったとか聞いた事があるなぁ」

「なるほど……だいたいわかりました。ありがとうございます」

「いやいや、いいさこれくらい。今日はどうするんだい? 泊ってくかい?」


 そう言ってくれたお父さんには申しわないんだけど、俺はすぐに確認しなくちゃいけない事があると分かって、そのまま市川家別荘に戻ることにした。

 もちろんここに来たみんなにも協力してもらわなきゃいけないことがある。レイジに聞かなきゃいけないこともある……


 俺の頭の中にはもうそれしか浮かんでこなかった。





※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


お待たせ(ん?待ってないかな?)いたしましたm(__)m

構成を少し変えたので遅くなりました。

はい、いいわけです(>_<)

ココから7章はラストスパート…と言ってももう少しかかるかな…。


真司がレイジに聞きたいこととは!?

真司たちは結界をどうするのか!!


なるべく早く書きますので、お楽しみにして待っていただけると嬉しいですm(__)m




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