あの姿

 少し陽に焼けて赤くなり始めた肌を鎮めるため、早めにシャワーを浴びる事にして女子組の皆さんは屋敷に戻って行った。

 先ほどまで黄色い声の飛び交っていた砂浜は今は静まり返っている。

 俺はビーチパラソルをやレジャーシートなどをかたずけるため一人浜辺に残った。


 そしてまた海を眺めるようにして浜に腰を下ろした。


 色々な考えが浮かんでは消えていく。この街に降り立った時に感じていたあの体に重く乗りかかられているような感覚。


 伊織にはあまり感じないのに俺にはかなり堪えた事。そして日暮さんのところでの演舞。もう一人を探すレイジ。

 たぶんこれらはすべて関係してる事だろう。


 例えば、何かを封印してるモノを守るための儀式か何かが、年月を重ねてきた過程でその様式だけが残り、本来の意味を忘れてしまっているただの行事になって続いている…みたいな感じか。




「君は思った以上に賢いようだな」

 突然目の前にレイジが現れた。


 先ほどまで見ていた浜辺の景色が無く、ただただ奥にも上にも白いだけの世界が広がっている中に俺とレイジの二人だけがいる。


「こ、ここはまた……」

「そう……私が居た世界だよ。なにもないだろ? ここ幾年も私にはただただ日々を過ごしていただけだった。眠っていただけなのしれない。でも今年になってなぜか目覚めてしまったようだ。 理由は分からないけどね」

「どうして俺をここに?」

「うむ。まだ私の事を周りに言ってほしくないのだよ。できれば……探しているものが見つかるまではね」


――ここに俺を連れて来てまでそんな話をするって事は、自分なりに探してはいるのか。そして他の人などに情報が洩れる事を恐れているという事で、おそらくレイジの探すは簡単にはいかないところにいる、もしくは有るって事なのかな…… 


 俺の座っている場所の隣に静かにレイジも腰を下ろした。


「俺は、俺達は何を探せばいいんだ?」

「確か君の連れの中に巫女の血を継いでるものが居たな」

「ああ、日暮さんの事か?」

「まずは君がしなくてはいけないことはなにかな? なぜ体が重く感じるのか、なぜ君の妹はそれほど感じないのか。これが分かれば近づくかもしれないな」


 それに日暮さんがどういう関りがあるのかさっぱり見当がつかないけどな。

 でもわざわざこのような空間に連れて来てまで話さなきゃならないんだから、他の誰かには聞かれたくない事が含まれてるのかもしれない。


「急がなくてもいい。私は待つことには慣れているのでね。君たちも後数日はこの辺りにいるんだろう? その間に少しでも探し出せるだけの手がかりでも掴んでくれるだけで構わないから」


「それに……」

「それに?」


 横に座っているレイジの顔を見る。

 これまであまり表情を変えないでいたレイジだったが、それ以上に真剣な感じが伝わってくるような真顔になっている。


「カノジョたちのあの姿が見たいんだろ?」

「な!? え!? なんでそれを!?」

「そりゃわかるさ。君は珍しい位に素直すぎるからな」

「……」


――確かに見たいと思ったけど、そんなに真顔で言う事か?

あれ? もしかしてこの気持ちって女子組にもバレてるのかな? 

そうなったらここにはもういられなくなる。


 下を向いて頭を抱え込む。


「あれ!? お義兄ちゃ~ん!?」


「さぁて、君のお迎えが来たようだから戻るとしようか」



 ピカッ!!


 目の前でまたあの眩しい閃光が走り抜けていく。


 まだチカチカする眼を少しずつ開いていく。


 そこはちゃんと白い砂浜と青い海の広がる世界。

 先ほどまでレイジといた白いだけの場所とは違う。

 ホホに当たる風は優しくて、刺すような痛みさえ感じる太陽の日差し。そしてこの抜けるような青い空。


――それから……


「あ!? いた!! あれ? お義兄ちゃんどこにいたの!?」


 俺の心を落ち着かせる聞きなれた声が近づいてきた。

俺はやっぱりこっちの世界がいいなぁって本気で思った。






※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


だんだんと話が確信に迫ってまいりましたが、まだ続きますよ!!

だってまだ海に来て二日ほどしかたってませんからね。

日暮事件編からだと五日間くらいかな。


いつも以上に女の子に囲まれた夏を送り始めた真司です。

正直書いてて羨ましく思います(笑)


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