ひいきなし!!

「はぁっ!!」

 日暮さんが高く飛び上がりながらボールを打つ。


 ずざさぁ~!!


「あぁ~ん!!」

 響子が横に飛びいながらレシーブしようとしたけど届かなかった。


「やったぁ~!!」

「綾乃さん凄すぎだよぉ~!! 部活とかやってるんでしょ!?」

「いいえ。演舞の練習だけよ」


「はい、相馬・日暮・藤堂組の勝ちぃ~」


 俺は手を挙げて宣言した。

 今はなぜかビーチバレーの審判をやらされている。

 この中に入って一緒にボール追いかけるとか、そんなことできません。

――こうして見てるだけでも良い目の保養に……


「ちょっとシンジ君!!」

「な、なんだよ!!」

「向こう側に甘くない!? 伊織ちゃんがいるからってひいきは無しだよ!!」

「へ、変な言いがかりはよせ!! 実力が無いのを俺のせいにするな!!」


 カレンが負けた悔しさの矛先を俺に向けてきた。

――なんでも俺のせいにするんだよなコイツ……


「そろそろ休憩にしようよ」

「そうねぇ。のど渇いたし」

「わたしコーラもらっていい?」


 それぞれの手に飲み物を持って砂浜へそのまま腰を下ろしていく。


 ビーチパラソルを中心にして色とりどりの花が咲いてるみたいに綺麗な光景が目の前に映る。

――この光景を一人で長時間も目にしてるのはなんだか申し訳ない気がして来た。こんなにキレイな花の中に男が俺一人って。

 絶対にクラスのヤツラにばれないようにしないとまずいな……

 あれ?? 男ひとり??


 俺は周りを見渡してみるけど、その姿が見当たらない。


「あれ? レイジがいない」


「そういえば……」

「あ! 私見たよ!! みんながここに来る前に、一人でお屋敷の方に歩いて行ったみたい」

 相馬さんが見ていたというなら、とりあえずは安全だろうな。まだ近くにいるだろうし。


「ねぇ? 正直言ってどうなの? あの子」

「なんか不思議な感じなのよねぇ……話しやすいというか……う~ん」

「でもさ、悪くは感じなかったよ? 私だけかもしれないけど」

「で…シンジ君はどう思ってるの?」


 一斉に俺に向けられる視線。こういうの慣れてないんだよな。特に女の子から向けられる視線なんて、軽蔑とかそんな感情の時くらいしか感じたことないし。

 でも今向けられてる視線はそんなものじゃなくて、純粋に意見を求めてくれてるもので信頼されてるからこそ俺に向けられたものなのだ。


――正直に思ったことを話すのが、今の俺に出来るこの信頼の証だと思う。


「俺が思うのは、彼は霊的なモノじゃないような感じがする。何かを守ってる存在というか…上手く言葉に出来ないんだけど、お守りみたいな感覚……かなぁ」

「それ、何となくわかる」

「私も、お義兄にいちゃんと同じような感覚です。彼と話をしてると安らぐというか、落ち着くんです 」


 皆がこくこくとうなずく。

――俺も同意見だ。


「それに、彼は初めて俺の前に姿を現した時にこう言った「もう一人を探してくれ」って。と、言うことは本来彼は二体以上で一緒にいるんじゃないかなと思うんだ」


「ソレはどういうこと?」


「うん。確信はないんだけど、響子さん理央さん、この近くに神社とかお寺とかが無くなったとか聞いた事が無いかな?」


 市川姉妹に視線が集まった。


「えぇ~? そんな事あったかなぁ~?」

「私は聞いた事がありま……すね。確か……」


 理央が何かを思い出したようだ。その話がきっとレイジのあの言葉と関係してるんだろう。

 心の中ではそんな感じがしていた。




※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。



少し短くなってしまいました。


もう少し海辺の水着編が続くと思います。

しばらくお付き合いくださいm(__)m

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