盗らないから

「はい、着きましたよぉ」

こちらを振り向いてにっこりとする市川夫人。

近くで見ていると確かに響子・理央姉妹のお母さんだなぁって感じる。

姉妹に表情がそっくりなのだ。


日暮邸から、きゃぴきゃぴ声が響き渡る車で走る事一時間。

途中で一回だけ大きな道に出たけど、それからまたすぐ小道に入り直して林の中を走る事十分。

目の前に大きな洋館のような建物が見えてきた。


「ここって……」

「わぁ……おっきぃ」

「お城?」


車を降りながらそれぞれが感想を述べる。

それほど大きくてとても日本にいるとは思えない家…ではないな、欧米にでもある様な屋敷が建っている。

中世のヨーロッパ風なたたずまいを持つこの建物は、とても個人で所有できそうなものには見えなかった。


――そして気になる事……


「この感じは……」

「お義兄ちゃんこれって……」


伊織も感じるようになったみたいだけど、この俺の体が重くなる感覚はこの街に降り立った時から感じてるモノ。

それが、ここにきて急に強くなった。

近くに影響してるモノがあるのかもしれない。ただ今はそれを探したりするよりも考えなきゃいけないことがある。


――そう……


「え~っと、すいません。今日からここに泊まるってことですけど、ご主人はどちらに?」

「いないわよぉ」

何ともあっさりに言い放った市川夫人。

「いないって……男は俺だけって事ですか!?」

「そうですよぉ。あら? あららぁ? なにかまずいことでもあるのかしらぁ?」

荷物運びしてる俺の近くに、市川夫人が凄く楽しそうで面白がっているような表情をしながら体を近づけてきた。

「いや、べ、別にないですけど。ちょ、ちょっと近いです!!」

「あら、照れちゃってかわいいわねぇ」

「ちょ、ちょっと!! お母さん!!」


救援を求める俺の眼を感じ取った市川姉妹が夫人を引き離してくれた。


「あら妬いてるのぉ? 大丈夫よぉ。あなたから盗ったりしないから」

「な!!」

「え!? どういう事!! ねぇちょっと!! 理央!!」

――姉妹によるにらみ合いに発展するというこの状況……はぁ~。


結局荷物は残されたままで、俺が運ぶことになるのかとガッカリしたらため息が漏れた。


お手の部屋は下に当てられたので荷物を持って部屋の前まで移動すると、廊下からスーッと消えていった何かが視えた。そのまま部屋の前に荷物をどさっとおいてそのモノが消えていった方に歩いていく。


「なんだろ?」


そのまま角まで歩いて行くけど、何も気配を感じない。何も視えてない。


「あれ? 確かに視たんだけ……」


ピカッ!!


廊下のから窓越しに外に視線を移したときその光が突然目に映り込んできた。


「うわ!! 何だ!?」



未だチカチカする眼を少しずつ開いていく。慣れるまでもう少しかかりそうだ。



「ほう……まさか私に付いてこれる者がいるとはな」


「あれ? どこから声が……」


「おい!! 君!! けっこう失礼な奴だな!! 下だ!! しぃ~たぁ!!」

「はえ!?」


言われた通り視線を下に向けると、目の前には白い作務衣のようなものを羽織った一人の少年の姿があった。


「私は君のような者を待っていたのかもしれないな……」

「な、なにを?」

「私の事が視える者、つまり君をだよ」

「嫌です!!」


先に言っておかないと、なんだか嫌な予感がする。

日暮さんのトコを解決したばかりで、すぐに厄介ごとに巻き込まれたくない。そうでなくてもこの頃は自覚しつつあるのに。

[俺は霊感体質で巻き込まれ体質なのか]って事に。


「あははははははは!!」

「??」


思ってもみなかった反応が返ってきた。彼は本当に面白そうに腹を抱えて笑っている。


「うん。やっぱり君だな。面白いよ、いや実に面白い。だからお願いする」

「な、なんですか?」

「おや? 嫌なのではないのか?」

「そ、そりゃまぁ」


瞬きしたその瞬間に彼はもう目の前にまで移動してきていた。


「頼む。 もう一人の私を探してはもらえないだろうか?」


――やっぱりこうなっちゃうんだよねぇ……




※作者の落書きのような後書き※


 この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


 皆様の応援ありがとうございます(^_^) 

ほんとうにうれしいです!!

これが自身処女作で初投稿作品なので喜びもひとしおです(≧▽≦)!!


 物語にも触れておかないとですね。このままだと本当にラブコメ路線に行きそうなので、少し構成を変えてみようかと考えましたが、やめました。足の向くまま、気の向くまま、筆が進むままに書いて行きたいと思っております。

それでもお付き合いしていただける皆様に感謝ですm(__)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る