参加するんだよ

――カレン事私と他のみんなで二日間、藤堂兄妹とうどうきょうだいナシで過ごす事になったんだけど……


「なんか……つまんなくない?」

「そうねぇ……」

「二人とも寂しいだけでしょ?」


 少し歩けばこの市川邸が保有しているプライベートビーチに行けるのだが、今日は何か行く気にならない。やっぱりなんか物足りない感じなのよね。

 だから、この理央りおの言葉にも否定できなかったんだけど、なんだろう? 響子まで黙っちゃったけど。


「ねぇ、カレン……」

「な、なぁに?」

「真司君と何かあったの?」

「え!? な!? えぇぇぇぇ!!? どうして!?」


――響子から振られた言葉に完全に動揺してしまった。


「なんだか…少し前、夏休みに入る前位から様子がおかしいから……かな?」

「べ、別に何もないけど!?」

「「ふぅ~ん」」


――さすが双子だなぁって思う。返事がそろっちゃうんだよね。


「あ、あのね、実はあたしシンジ君と約束してた事があってその話をちょっとしたかな?」

「どんな約束?」

「その……か、カノジョになってあげるって……」

「「えぇぇぇ!!」」


 ブブブブ ブブブブ ブブブブ


 またそろった声を聞いたタイミングで、脇に置いておいたスマホが震えだした。

 表示されているのはその男の子。


 慌ててその場の緊張感から逃れるようにスマホを耳に当てる。


「も、もしもし?」

「あ、カレンか? 今って大丈夫か?」

 噂の本人から突然の電話。タイミングがいいのか悪いのか。


――なんだか久しぶりに声を聞いたような気がする。


「え、あ、うん。周りに響子と理央もいるよ」

「そうか、ならみんなに頼みたいことがあるんだけど……」

「え、あ、ち、ちょっと待って!! 今ハンズフリーにするから……」


 スマホから手を放して、二人にも聞いてって感じのジェスチャーをする。

 顔を見合わせてから、頭に[??]を浮かべたまま市川姉妹も近づいて来てスマホから語られる言葉に耳を傾ける。



「い、いいよ!!」

「あ、うん。じゃぁみんなに改めてお願いがあるんだ。――と、いうわけなんだけど……こっちに来てくれないかな?」


 その電話から、この夏初めてにして最後かもしれないイベントが開始されることになった。



――事件解決後。

「とりあえずお疲れさまぁ」



 バンッ、ババンッ


 一斉に車から降りて別荘へと向かって歩いて行く。


「うん、結構疲れたねぇ」

「結構歩いたからね……あれ?」

「? 理央どうしたの?」

「ううん。気のせいだったのかな? 誰かに声を掛けられたような気がしたから」


 キョロキョロと辺りを見渡す理央

 残念ながらここにいるメンバーの中に、ソレらしいものが視えたりする能力がある人はいない。

 理央はかれていたこともあって、ちょっとだけ敏感みたいだけどあの兄妹きょだいとは比べられないくらいに低い。

 何かあったらやっぱりあの二人に頼るしかないのが今の私たちの現状なのだ。


 

 その頃俺と伊織は――

 日暮宅にて二日間の巫女演舞を無事に終えた俺達は、これから市川邸に向かうべくお迎えに来るというので外に出て待っていた。


 お世話になった日暮さん夫妻には、もちろんしっかりと挨拶を済ませてきたんだけど、その時に次回の演舞にも真剣な顔をした日暮父に誘われた伊織って凄いと思う。

 普通に巫女さんでいいんじゃないかと思ったりもしたけど、またいつものように「義兄あにの面倒見なくちゃいけないから」とか言って断ってたけど、それってどう聞いても理由になってないよなぁ。

 それから俺達の父さんは、初日の演舞を見終わってすぐに二日目の演舞も見たいからと、

 事件の話を聞く為とか理由をつけて所轄に掛け合ってたみたいだけど、あっさりバッサリ断られたみたいでずっとこっちを眺めながらウチの方へと戻って行った。

 後でしっかりと撮っておいた動画と画像を、仕事の都合で来れなかった義母かあさんのスマホと一緒に送っておいてやろう。


 どうもこの体の重さの原因は日暮綾香さんのせいではなかったらしい。

 あの時舞台の上で消えた綾香さんは、自分が亡くなった時の心残りがあの時に解消されたんだと思う。

 その妹の綾乃さんは演舞が終わった後、人目をはばからず大粒の涙を流していたんだけど、駆けてあげられる言葉を俺は持ち合わせていなかった。

 そして今になっても綾香さんが現れないという事と、この体の重さを考えれば別の事が関係しているんだと推測している。それが何なのかは今は分からないけど。


「お待たせぇ」


 考え込んでいたところに市川家のワンボックスカーが目の前に停まって、中からなぜか我が家のモノみたいな感じのカレンが飛び出してきた。

 その後に苦笑いしながら市川姉妹が降りる。運転席には市川夫人の姿があった。


「わざわざすいません」

 ペコっと挨拶する俺と伊織。

「あらぁ!! いいのよぉ!! 真司君たち兄妹きょうだいの為なら、うちの家族はいつでも全力でサポートするんだから」


――うん、普通に重いです……

市川一家から凄い重さの気持ちをいただきました。持ちきれません。



 車に乗り込んで、伊織が乗り込もうとしていると、社の方から日暮さんと相馬さんが、凄い勢いでこちらに向かって走ってきた。


――俺はてっきりお見送りかと思ったんだけど……


「ふぅ~、間に合ったね綾乃ちゃん!!」

「うん!! 良かった!! あ、市川さんのお母様ですか? この度はお招きありがとうございます」

 何やら車に乗ってきた二人が丁寧に夫人に挨拶してるけど。

 そのまま席に座ったため自動的に俺達が一番後ろへと追いやられる形になる。


「え、え~っと……どういう事かな?」

「あ、言ってなかったっけ? 私と綾乃ちゃんも一緒に参加することになったんだよぉ。だからよろしくね」

「「……」」


 俺と伊織は無言で顔を見合わせた。

 ――とても「聞いてないよぉぉ!!」なんて叫べるような状態じゃなかった。




※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


お読み頂きありがとうございますm(__)m


この章から新たに二人真司と共に行動するようになるんですが、ヤバいこんなに女の子ばっかりになっちゃう予定じゃなかったんだけど…。

戸惑っている作者でありますm(__)m

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