思わぬ相手

「どうする村上」

「どうするって……とりあえず写真は撮っておいて損はないだろ」

言いながら手を止めることなく写真を撮り続ける村上。

「今日ここに来ること言ったか?」

「いや、大体この捜査してること自体言ってない」

「という事は……」

「何らかの関係が有るってことだろ……」


 俺は頭を抱えた。


――まさかこんな展開になるなんて思ってなかったから。俺はあの家族に安心を与えてあげたかっただけなのに。

 それも自己満足でしかないのだけど。


「慎吾いったん引くぞ。このまま見つかるとまずいことになるかもしれん」

「そうだな……それに関係を洗いなおしてみなきゃならん」


 気付かれないように静かに車を動かしていく。なるべく急いで署に戻って調べなきゃならないし、他の署員が何か知ってるかもしれないから話を着てみないといけない。


――今日は帰れそうにないな……


 ため息を一つついた。


「なんだ? ああ、わかったぞ!! あの女医さんに会えなくて寂しんだろ?」

「違うわ!!」

「俺と慎吾の仲で隠し事は通用しねぇぞ?」

「うっせぇ!! 前見て運転しやがれ!! ニヤついてんじゃねぇ!!」


 村上の笑い声と共に街の中を疾走する車の中から流れていく風景を見つめていた。


 署についても俺はどうしたもんかと考えていた。

 部長の事を聞くにしても、この中でオープンに聞いて回るわけにはいかない。もしかしたらまだまだ繋がりある人物がいないとも限らないからだ。


「さて……どうしたもんかな……」


 ブブブブ ブブブブ


 胸の中でケータイが揺れている。


 [自宅]

 表示はそう出ている。

――と、いう事は真司か……


「もしもし? どうした?」

いつもの調子で電話口で答える。

「あ、お仕事中ですよね? ごめんなさい。ゆいです」

聞こえてきたのは数日前に聞いたまま顔をみれずにいた彼女の声。

「へ!? あれ? どうして」

「土曜なので午後は休診なんです。それで……お邪魔してみたらシンジ君が中に入れてくれまして。その……藤堂さんに連絡してくれと頼まれまして」


 聞こえてくるはずのない声が聞こえてきたので、一瞬幻聴がしてるのかと思った。

 聞こえてきたのは嬉しいんだけど、どこか気恥ずかしさも感じる。


――いい大人が……何考えてるんだか……。

これだけの事に浮かれてる自分が情けない。


「そ、それで、真司は何と?」

「あ、はいそうですね。それが……幽霊サンが来てカンゾウがどうとかジンゾウがどうとか言ってると……。何のことでしょうか? でもそう伝えてくれって言ってます」


――カンゾウやジンゾウ? なんだ? 何かが……肝臓や腎臓……なのか?

 まさかな……


「ありがとうございます。それでその……今日は帰れないと真司に伝えて頂けますか?」

「あら……では真司君今日は一人でお留守番を?」

「ええ、そうなりますね。いつもの事なので慣れてるとは思いますけど」

「じゃぁこのまま私がお預かりしてもよろしいですか?」


 思わぬ提案にビックリした。

 まさかこんな展開になるとは思ってなかった。後で真司に感謝しなくちゃいけないかもしれないな。

 でも、その前にこちらでもやらなくちゃいけないことが増えた。


「そ、それではお願いしてもよろしいですか?」

「ええ、構いませんよ。伊織も喜ぶでしょうし」


 電話越しにではあったけど、向こうの彼女が微笑んでくれてるような気がした。


 電話を切った俺は即行動に移る。

 まずは情報を集める事。

 関係者の聞き込みと…それと課長の内偵を極秘に行う事。これは信頼している者でないと頼めない重要な任務。


――アイツしかいないか……


 俺は手にしたままのケータイでその番号を探し始めた。




※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


次回 後部座席で

お楽しみに!!

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