惚れたか?
捜査線上に浮かんできた怪しい話。
情報は次々と俺に上がって来ていた。
小さな出来事から、割と人数をかけないと解決できそうに無い事まで、みんなが頑張って集めてくれているのが分かる。
これだけでもかなりありがたい。
そして関連してそうなモノをその中から選び出して、俺と村上で時間を作っては訪問するという日々が続いた。
「おい慎吾」
「なんだよ」
「惚れたのか?」
「ぶふぅ!!」
飲んでるコーヒーを思いっきり吹いてしまった。
「掃除は自分でしろよ」
「ああ、すまん」
「やっぱり惚れたのか」
「…………」
次の現場に移動する車中で思わぬ銃撃を受けた俺の心は内心バクバクいっていた。
「まだわからん」
「なに? 好きなんだろ? 柏木さんの事」
「す、好きは好きだが……」
「あぁ……そういう事か。まぁお前らしいけどな」
そう俺の心の中には確かに「柏木さん」が大きく存在していることは確かなんだ。
だけどまだ大きく存在する女性もいる亡くなった妻だ。
そしてまだ幼い息子もいる。
そんな俺が軽々しく恋してるなんて言ってもいいのだろうか。考えても答えが出ないまま毎日が過ぎて行く。
柏木さんは娘の伊織ちゃんを連れて何度か遊びに来てくれてる。俺の足の事を心配してくれてるのと、息子真司を娘さんの友達として認めてくれたから。
同じチカラのある者同士だから側にいさせてあげたいという親心だ。
自分の部屋に通ってくれる女性。勘違いしないようにするのはとても簡単な事じゃない。
「いた!! あいつだ!!」
「おう。静かに後を追ってくれ。見つかるなよ!!」
「任せておけって!!」
前を歩く人影を静かに車で追っていく。
例の件を捜査している俺と村上は、霊がまた真司にコンタクトしてきた時にもう少し詳しく聞いといてくれと頼み、この辺りの事を話してくれたと嫌な顔をしながら真司が聞き出してくれた。
霊と仲良く話すってのも何か変な感じだけど、真司が話す|モ《・》
追い続ける事五分
人影をつけた道の先には小さな工場跡がある。
たぶんあそこに居るんだろう。
しかし今の状態では踏み込むわけにもいかない。
証拠になるものが一切ないのだ。
あるのは霊からの
どうしようかと迷っている俺達の前方に黒塗りのワゴン車が停まった。
息を殺しながらその様子を見つめる。
一人、また一人黒いスーツ姿のいかつい顔をした男が降りてくる。
もう一人。しかしいままで降りた二人と違い目隠しをされてクチにはモノを詰め込まれて話せないようにしてるみたいだ。
「村上……ちゃんと撮ってるか?」
「こういうのは任せろって言っただろ?」
「ふん……さすがだな」
降りてきたのは計五人。そのうちの二人は目隠しされていた。
とりあえず今日は収穫あったな。署に戻って報告と今後について確認を取らなければいけない。
相棒に戻る事を伝えようとした時、相棒の眼の色が変わった。
「ど、どうした!?」
「最後に降りたアイツ!! 〇〇組の幹部だ、間違いない!!」
「なに!?」
この〇〇組の幹部と言われる男は、別件で別班が追いかけているのだが、なかなか尻尾をつかまえることができずに苦戦していると聞いていた。
「こんなところで会えるとはな……」
その男の写真を撮りまくっていると、また別の車が現れて工場跡に停まった。
降りてきた人物――
「そ、そんな……まさか!?」
「か、課長……」
自分たちの直属の部署の上司。
今朝も話をして来たばかりの課長その人だった。
※作者の落書きのような後書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。
次回 思わぬ相手
お楽しみに!!
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