ちゅんちゅんちゅん


 トントントン……


 その日の朝はいつものスズメの話声と共に聞きなれない物音で目を覚ました。

 体のあちこちが少し痛む。


 昨日の夜遅くまで話し込んでしまった俺と柏木医師はそのまま寝てしまったようだ。

 隣の部屋をのぞくと子供たち二人は、仲良く寝息を立ててまだ眠っている。

 そのままキッチンへつながるガラス戸を開ける。


 昨日真司が渡したエプロン姿の柏木医師が、はなうた交じりに機嫌よく忙しそうに立っていた。


「す、すいません。お客さんにしてもらうなんて!!」


「あら、お目覚めですか? おはようございます。大丈夫ですよ、慣れてますから」

「あ、いあや、慣れてるとかそういう問題じゃなくてですね」

「じゃぁどういう問題なんです?」


 ニコッと俺に向けられた笑顔は、ホントに疑問に思っていない素直なものだと分かった。

 ここは、医師せんせいの行動にお任せした方がいいだろう。今の俺では文字通り足手まといになるだけだから。 

 ようやくそこまで考えが行きついたときにふと気づいた。


「おはようございます。ではお願いします」

「はい、お願いされました」


 またはなうたを交えながら調理に戻る姿を少しながめていた。




「ところで藤堂さん」

「は、はい!!」


 朝食を囲んでゆったりしていた俺に、思い出したように声を掛ける医師せんせい

 俺もビクッしてしまう。あんまり女性に声かけられることが少ないから。特に最近はいつも隣に村上というナンパ師がいるし……違う!! 相棒がいるし。


「今日もご出勤なさるおつもりですか?」

「え!? ええ、まぁそのつもりですが」

「医師としてはあまりお勧めできませんが……。娘の……伊織の為にもその事件解決して欲しいという複雑な思いで今私は座っています」

「ええ、その気持ちは分かりますよ。俺も真司の為にも解決したいと思って動いてましたから」


 二人の間に少し甘いような空気が漂う。

 それを切り裂いたのは、その話を俺にもって来た張本人だった。


「結婚するの?」


「「ッ!?」」


 突然の言葉に顔を見合わせる二人。その二人を見つめる子供二人。


 朝の食卓にはそんな微妙な空気が流れていった。



「そ、それでは失礼します」

「すいませんお送りしたいところなんですが」

「お気になさらずに」


 これからウチに帰る柏木さんを玄関まで出て見送りをする。


「あの藤堂さん」

「なんでしょう?」

ゆい。私の事はそう呼んでください。このはもちろん伊織で結構ですので」

「そ、それは……よろしいんですか?」


 返事の代わりに帰って来た笑顔。

 その笑顔を残して去っていく柏木医師かしわぎせんせいの後ろ姿を、隠れて見えなくなるほどまでその場に立って見送っていた。

 たぶんこの時、俺の顔は凄くだらしないことになっていただろう。誰かに見られていたら変質者に間違われても文句が言えないほどに。


「さてと……」


 部屋の中に戻って取り出したケータイ。

 今日はケガの事もあって上司からは出てこなくてもいいことになっているのだが、気になっている事の調べは言えの中にいても出来るし、慕ってくれる仲間も何人か存在するので連絡を取る。

 もちろん信じてる息子のために頑張るのだけど、今はその頑張る理由に二人の存在が増加した。

 柏木親娘。

 特に娘の伊織ちゃんは真司と同じ能力チカラを持っているとなると、それを証明するためにも…いや違うな。俺はもうあのの事は信じている。

 この気持ちは娘を思う親のゆいに向けられたものだろう。



「恋……かな?」


 思わず視線を写真立てに向ける。

 そこには俺に向けられた最高の笑顔をする最愛の人の姿があった。





※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


次回  惚れたか?

お楽しみに!!


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