嬉しいです

 ピンポーン――


 ガチャ


「いらっしゃい」

「すいません。来てしまいました」


 ドアが開かれた時、目の前に立っていたのは小さい女の子だった。

 その後にメガネをかけた女性が立っていた。


「い、いえ、どうぞ。散らかっててすいません」

「いえいえ、お構いなく」

 何度かそのような会話が玄関先で繰り返された。


「父さん、早く入ってもらいなよ」

「え!? あ、そうだな、うん。し、失礼しました。どうぞ」

 息子に突っ込まれて我に返り、足を引きずりながら部屋の中に招き入れた。


「あの、藤堂さん。座っていてくださって大丈夫ですよ。押しかけてきてしまったのは私の方なんですから」

「すいません。まだ越してきて荷物もそのままってとこもありますが、どうぞ。伊織ちゃんだっけ、こいつは真司って言うんだ。仲良くしてやってね」

「…………」

「すいません。そんなに人見知りする子じゃないんですけど」

「ああ、気にしなくていいですよ」


 お土産です。と言ってタッパーに入ったおかずなどを渡してくれた。

「柏木さん、これは?」

「あ、あの、藤堂さんの足がその状態では大変だと思いまして、差し出がましいかとは思いましたが、作ってきました」

「え、良いんですか? ありがとうございます。助かります」


 俺と柏木さんが話をしてる間に、いつの間にか隣の部屋にいた子供同士は仲良くなっているようだ。


「あの、柏木先生、昼間の話なんですが……そのアレが視えるって言う」

「は、はい!!」


 俺の視線を追って隣の部屋の子供たちを見ていた彼女の体がビクッと震えた。


「す、すいません。その……あの子がこんなに早くなつく子がいるなんて初めてだったものですから」

「ああ、真司ですか。あの子も不思議で、人を引き付ける何かを持ってるような気がするんです」

「何があったとしても子供を見てると和みますしね」

「そうですネ」


 そのまま少しの間、二人の子供を見ながらのゆったりとした時間が部屋の中を流れていった。



「あの……この間の話ですけど、藤堂さんはどう思っておいでですか?」

「そうですねぇ……」


 そのまま視線は子供たちを見つめたまま。


「俺は自分の思いを変えるつもりはありません。そして…いおりちゃんも同じ力があるというのであれば、俺はそれも信じますよ」

「そうですか……」


 改めて隣を振り向くと、柏木さんは嬉しそうな顔をしながら真司を見ていた。


「その……嬉しいです。初めての方にこんな事を話したのもそうなのですが、伊織の事まで信じて頂けているとは思いませんでしたから。それにシンジ君」

「真司がなにか? 」

「あんなに伊織が素直に他人ひとになつくなんてありませんでしたし、あんなに楽しそう」


 確かに隣の部屋ではきゃいきゃいと子供たちが仲良く遊んでいた。


「嬉しいです」

「え?」

「シンジ君を伊織に会わせてくれたこと。あなたに……会えたこと」

「ッ!!」


 ドックン!! 


 そう言いながらこちらを振り向いた彼女はとても……キレイだった。





※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


次回  エプロン

お楽しみに!!

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