ウチに来ませんか?

「今……なんて?」

「あ、あの、ここではなんですのでもう少し待ってていただけますか? 休憩時間にお話します」

「わかりました。ではしばらくは待合室で待ってましょう」


 挨拶だけして診察室を後にした。


 会計を済ませる時間になっても、相棒の村上は姿を現さず固まってる足をどうにか動かしながらそれを済ませた。

 それからしばらく待っている。

 ――何だろ? なんか……意識が……


 誰にも邪魔にならないように一番奥の目立たない場所に一人で座っていたら、そのまま眠っていいたらしい。

「藤堂さん。お待たせしました」

「ふえぇ?」


 隣で座っている白衣姿の女性。

 待っていた柏木医師だ。


「お疲れのようですね。 少し休まれてはいかがですか?」

「す、すいません。お見苦しい所を……」

 あわてて顔を腕で拭う。万が一よだれが流れていたりしたら失礼だし、何より俺が恥ずかしい。

「いえいえ。刑事さんも大変なお仕事でしょうし、お疲れなのはわかります。それに今は足をケガしていらっしゃる。気をつけないといけませんよ」

――指を立てては何か子供に言い聞かせるように言われてる俺って、どうなんだろう。でも、なんかいやじゃないんだよなぁ……


 ようやく回るようになった頭を回転させて言葉をクチにした。

「それで、柏木医師。お話というのは?」

「ああ! 失礼しました。 つい娘に言うみたいな感じになってしまいました」

――ああ、やっぱり。


「それで、お話というのは……もしかして藤堂さんはウチの娘に何か言われて捜査をしているのかと思いまして」

「ああ、まぁそうなんですが、そういう事だけではないんですよ」

 へ? って感じな顔でこちらを振り向く。


 ――この女性ひとにならいってもいいかな……

 なぜかこの時俺は思ってしまった。



「うちの息子も同じような事を言うんですよ。[幽霊]が話しかけてきたって」


 彼女は驚いていた。もともと大きめな感じのする瞳が見開かれている。


「親バカだとも思われるでしょうけど、俺はそれを信じてる。息子を信じてるんです。そしてそれを捜査しようとしていたら、偶然に柏木医師の娘さんと出会ってしまった、その話を肯定するような話だったんですよ」


 母としての直感なのか、女としての勘なのか……この時の私は、初めてお会いする男性ひとだけど嘘を言ってるわけじゃなくて本心で話してくれたんだとすぐにわかった。医師としてなんていう立場とともに、親として女としてここは行動するべきだと直感が言っている。


「あ、あの藤堂さん。お怪我の事もありますし、子供の事を助けて頂いたお礼にウチにきてみませんか?」

「いえ、このけがはお嬢さんの責任だというわけではありませんからお気になさらずに」

「いえ残念ながらすでに私は、藤堂さんの息子さんに興味を持ってしまいました。ぜひぜひお越しください」

  これが住所と電話番号ですっててわたされてまた先生は診察室の方へ戻ろうとしている。

「せ、先生! いつの事ですかこれ!!」

「ああ、今日ですよ? よろしくお願いします藤堂さん」

 最後にペコっとお辞儀だけして走って行ってしまった。


――これってナンパじゃないよね?

 俺は心の中で相棒である村上と一緒にはなりたくないと思っていた。


そのあとになって柏木先生と連絡を取って、先生の住んでいる場所ではなく俺と真司の暮らすアパートに来てもらう事にした。もちろん今日という事ではなくまた後日にという事で。

俺にとってそれが精いっぱいだった。



※作者の落書きのような後書き※


この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。



次回  嬉しいです

お楽しみに!!


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